第十二録:仲間 四節「再び」
「すごいな…強い」
ウルの戦いを見て感心した…俺はあの突撃はギリギリ目で追えていたがもしもアイツと戦ってアレを避けれるか…言動はアレだがやはり実力は確かだったそれに──
「おおー!すごいのう!魔法じゃ!」
「だな、あんな事できるなんて」
夜天羅が興奮するのもわかるこの世界に来て初めて見た派手な魔法。
「あら?あれは魔術ですわよ?」
「そう言えば…魔法と魔術の違いってなんだ?」
いままでは特段気にしてはいなかったし村での生活していた頃はほとんど無縁、魔術は便利な物くらいの認識。
「あぁ…お二人は異邦者でしたわね」
「簡単に言えば魔法は大型弩砲、魔術は携行弓ってな感じよ」
体力が回復したネローズは軽い説明をしてくれる、なるほど何となくわかった気がする、にしてもあの威力で魔術なのか…魔法となればもはや戦術兵器だろうな。
「もう!雑な説明ですわ!」
「魔法は複数人運用、魔術は個人で使用ができる、と?」
「まぁ…概ねそうですわね、ごく稀に魔力量が多い人は一人で使えたりもしますわ。あと魔法は魔法陣が必要で魔術は術式が必要ですわ」
と言う事は…あの枢機卿はかなり凄いことをしていたんだな…あの時戦わなくてよかった。
「ねー!早くウルと合流しようよ!」
ブランカはその場で駆け足をしてソワソワと落ち着かない様子。
「えぇそうですわね、行きましょう」
「わーい!」
「えぇ…」
待ってましたと言わんばかりに駆け出すブランカそれとは対比してネローズは重い腰を上げて歩き出し全員でウルの元へ向かう。
「ウルー!かっこよかったー!」
「ハハ!ありがとう僕の美しい恋人たち!」
「もう…調子の良いことですわ」
「しょうがない、惚れた弱みよ」
ブランカは思い切り飛びついてウルに抱きつくレミリア、ネローズも側に控えると四人の周りには甘い空気が流れる。
にゃうんにゃにゃ
夜天羅の足元からひょっこりと顔を出したコイスケ、俺はコイスケを抱き上げ肩に乗せた。
イチャイチャしている所に水を差す様で悪いがウルに声を掛けた。
「お疲れ」
「お疲れ様なんじゃ」
「ハハ!ヨリツグ、ヤテンラすまなかったね!」
「気にしとらんよ」
「俺もだ」
ウルの良いところは自分がした事に責任を持って対処する姿勢と実直な言葉そして実際に解決、最初はぶん殴ってやろうかと思ったが。
「…にしてもあんな高威力の魔術を使って大丈夫なのか?」
俺はウルの魔力の消費を心配した。
今のは言ってしまえば前哨戦本番は洞窟に引きこもっているネフィリム。
「大丈夫!あの程度なら問題ないさ!」
前髪を軽く払いながら自慢げな顔をする…まぁ、見た感じも余裕そうだから問題ないだろう。
「邪魔者も片付いたし洞窟に行こうか!」
「だなぁ」
俺たちは再び洞窟へ向かう。
魔物がいない安全な道を進むと最初より早く洞窟前に到着する、魔物がいなくなり伽藍とした洞窟は深い闇の様な入り口が不気味に広がっていた。
「…奥に生命の反応がありますわ」
「同じく嫌な魔力を探知したわ、ネフィリムね…羽化したてなのか動かないわね…?」
レミリア、ネローズ二人による二重の探知で様子を探った、どうやら羽化してしまっているらしい。
その報告を受けてより慎重に警戒心を高める。
「とりあえずそうだな!対象を外に出そうか!」
洞窟の正面に立ち騎槍を突き出して構えるウルは槍を開き内部駆動が露出して回転を始めパチパチと小さな紫電が弾ける。
「どうする気だ?」
「なに!中に入るのは危険だからね!引き摺り出してやるのさ」
「…洞窟の距離はそう長くありませんわ、それに都合が良い事に直線ですわ」
「魔術とかで防御している様子もないよ」
「ウルやっちゃえー!」
「雷槍砲撃"ヴォルフケラウノス"」
バリッ…紫の稲妻は吸い込まれる様に洞窟へ一直線に侵入、一拍遅れて雷の轟音が響く…すぐに光と音が収まり静寂が訪れる。
数秒の沈黙。
「おや?出てこないね?」
「魔力の反応は変わらずよ」
「同じく…生命活動を続けてますわね
動く気配もなっ…!!!!全員!跳んで!!」
その言葉と同時に全員が地面から飛び退いたその瞬間、地面を突き出し現れたのは気色の悪い触手、タチが悪いのは捕まえるための触手ではなく至る所に棘が生え殺すための形をしていた。
俺は夜天羅と自分に向かってきた触手を抜刀して切り落とし木の太い枝へ着地、警戒をしつつウルたちの方へ視線を移すとレミリアは魔術で自身を浮かせ触手を焼き払いネローズはレミリアと共に同じく魔術で浮遊し触手は使い魔らしき生物が阻止。
ブランカはその小柄な体躯を活かし俊敏に木々を跳ね回りウルは華麗に回避して紫電で焼き払う。
「ハハ!元気だね!」
「言ってる場合か」
「しかし…出てこんのう」
夜天羅が言う様にネフィリムは出てこない触手の攻撃も一回で終わっている。
「困ったね!恐らく雷撃が効かなかったのは繭の残骸のせいかな!ただ破壊は出来たはずさ!もう一発打てば出てこざる得ないさ!」
そう言うや否や地面に降りたつウルするとすぐに触手が現れたにも関わらず無防備に構えた…少し焦りを覚えたが襲いかかる触手が焼き払われ使い魔に阻止されウルに届く事はなかった。
「今度は少し強めに行こうか!」
うなりをあげる駆動、ほとばしる紫電、そして──放たれたのは先ほどより濃い紫電。
キシャァァアァァアアァ!!!
響く不気味な悲鳴、二発目は見事にクリーンヒット。




