第十二録:仲間 一節「昇格」
「そ、そこまで!!」
慌てて審判が試合を終了させる。
死屍累々、そう言わざる得ない状況
とてもじゃないが試合の続行は不可能。
地に伏した奴らを一瞥して俺は夜天羅の元へ
「ちとやりすぎじゃあ!お前様が
むやみやたらにこんな事しないのはわかっとるが!」
チラリと今だに地面に伏している
奴らに視線をやる…実戦なら惨憺たる惨状だな
「ごめんごめん、我慢できなかった」
「むぅ…」
夜天羅から刀を返してもらいつつお叱りを受け潔く謝る。
他にも言いたげな顔をしていたが俺に反省を受けてかそれ以上は止めた事。
夜天羅は俺が試合でなければこんな事はしない
そこをわかってくれている。
自分でも少しやりすぎたとは思っている
しかし奴らは俺の逆鱗に触れた。
夜天羅やコイスケ…家族を貶し害をなそうとした
「でも…わしの為に怒ってくれてありがとうなんじゃ」
褒められたものではないの確か。
ウルには美しくないと言われるんだろうな。
「勝者ヨリツグ!ヤテンラ!、現時点を持って二人を三等級に昇格。」
審判から勝利と昇格が告げられる、するとパチパチと拍手の音が聞こえる。
振り向くとウルたちが俺たち向けて手を鳴らしていた。
俺たちは審判に礼をして試合場を降りた。
コイスケとウルたちの元へ向かう
にゃうにゃん!
すぐに俺に飛びついてきたコイスケ、ゴロゴロと喉を鳴らす。
「いやぁ!なかなかワイルドだね!」
「…ヨリツグさん実戦ではお止めになってくださいね?」
「まぁこれは相手の発言が悪いねぇ」
「すっごーい!」
賛否がある感じの称賛、以外にもウルの発言が普通…
てっきり美しくない!と言われるコトを覚悟していた。
「…確かに、さっきのヨリツグは美しいとは言い難いが
同じ立場なら僕でも同じコトをするかな!
だから時には美しくない事も必要さ!」
俺の顔を見て何を言いたいか察したウル
屁理屈めいた慰めをしてくれる。
「ありがとう」
にゃんにゃあん!
「いいさ!それより二人とも昇格おめでとう!」
「ありがとうなんじゃ」
「どこかで祝おうじゃないか!」
「いいな、肉でも食いに行こう」
「やったー!」
肉と聞いて両手をあげ全身で喜びを表すブランカ
…まぁ、好きそうだもんな
「今回はわしらが出すかのう」
「そんな…お二人は祝われる側ですのよ?」
レミリアがそう言うのもわかるが
ウルたちにはお金を出させるのは気が引ける。
「いいんだ、まぁ…ちょっとした贖罪と思ってくれ」
試合とはいえかなりバイオレンスな場面を
見せてしまった、その罪滅ぼしみたいなもんだ
「では!御馳走になろうかな!」
食事に行く事が決まり俺たちは闘技場を後にして
デストロイ・ビーフに向かい食事をする
特にブランカとネローズが大喜びしていた。
ブランカは肉、ネローズは酒豪の様でワインを楽しんでいた。
「いやぁ!素手であれだけ強いなんて驚きだ!」
「今回は相手が弱かったのもある
徒手格闘を専門にしてるやつには流石に敵わない」
俺の専門は刀、徒手格闘は近接で
役立つからと夜天羅に教わっていた。
「それなら安心するといい、素手で戦う者は
そう多くはないほとんどが武器か魔法をつかうからね!」
「あまりおらんのか?」
「身体強化は皆使う魔術だけど練度の差が激しいのさ!だから
今日のヨリツグみたいな真似をする者は稀も稀、白狼族くらいかな?」
…確かに、魔法や魔術があれば素手を
極めようとは思わないかもしれない
興行試合なども武器を使い安全に戦える。
「わたしー?」
食事から顔を上げたのブランカ。
ウルの言葉に反応した彼女は白狼族なのか?
「ブランカは白狼族なんかのう?」
「うん!」
ブランカの髪色は黒色…
…あの時一人だけ種族ではなく神殺しの牙と言っていたな。
「ハハ!そう美しいブランカこそ白狼族さ!彼女は素手で戦わないがね!」
「そういえば…わたくしたちの戦闘スタイルなんかを教えていませんでしたね」
「言うだけなら簡単だけど…あ、慣らしで別の依頼みんなでやらない?」
ネローズからの提案。
互いの戦闘スタイルや立ち回りを把握し合うのは大事な事だ
それに夜天羅はまだ実力すら見せてないし俺も刀を抜いてない。
この提案に乗らない手はないだろう。
「いいな、それ」
「うむ、よい案じゃ」
俺たちはネローズに同意する、となると依頼の等級は
一等級…この人数なら大抵の事は問題はない。
「では、こちらで依頼を選んでおこう!」
「よろしく頼む」
それからは他愛のない談笑などをして楽しい時間を過ごす。
──二日後、早朝。
今日はメルサさんとダリアさんがエルサル村行きの馬車の護衛の日。
俺と夜天羅は見送る為に駅に訪れた。
「メルサさん、ダリアさん」
二人を発見して俺たちは駆け寄る。
あちらも気がついたのか笑顔を向けてくれた。
「おお!お二人ともおはようございます!」
「おはようっす!」
俺たちも短く挨拶を返す。
「いや〜改めてこの間申し訳ないっす」
「いいんじゃよあまり気にせんと」
酔っ払った件を言っているんだろう
ダリアさんは調子が戻った日にわざわざ宿まで来て謝罪しに来た。
「わざわざ見送りありがとうございます!」
「メルサさんとダリアさんにはお世話になりましたからね」
「そうじゃよ、あ、これどうぞじゃ」
夜天羅は二人に紙袋を手渡す
これはミレーネさんに頼んでいたお弁当だ
「おぉ…これはミレーネさんの?」
「そうです、任務の合間にでも良ければ」
「ありがたいっす!」
二人は喜んで受け取ってくれた。
「あ…出発の準備ができましたね…」
メルサさんが視線を向けた先、他の兵士が身振りで合図を出していた。
「名残惜しいっすけど…お二人ともお元気で!」
「うむ!メルサどのもダリアどのも達者でな!」
「メルサさんたちも元気で、ファスさんにもお伝えください」
「はい!では」
俺たちは馬車に向かう二人に手を振る
メルサさんたちは馬車に乗りすぐに動き出した
「…お別れじゃのう」
「あぁ、だな」
夜天羅は俺に寄り添うそれを受けとめて
肩を抱く別れもあれば出会いもある。
俺たちはこの世界でそれを繰り返していくだろう
…でも後ろ向きな気持ちはない。




