第九十二録:募るは──。一節「解決することない自問。」
ザディルとの通信が終わりゴルドーは兵の派遣やライラへ任務を伝えるために足早に訓練場を去っていった。
ゴルドーが使った反対側の出口…そこに座り込んでいたのは最初に帰ったはずの理人。
「また…覡か……」
壁に背を預けて地べたに座る。
表情は暗く…その瞳には仄かに燻る嫉妬が熱を放ち始めていた。
「僕はなんで…こんな…対抗心を………っ」
自身の心情、その嫉妬心が存在することを理解しつつもなぜこんなに嫉妬をしているのか原因が理解できない。
自分より強いから?自分よりゴルドーさんと親密だから?……違う。
上げた理由に納得できない、事実から目を逸らしている訳じゃない。
「っ…」
考えれば考えるほどにモヤモヤと嫉妬だけが積もっていく、そんな自分がどうしようもなく不愉快で自己嫌悪が深くなる。
「理人?」
「!?あ、天音…」
薄暗い廊下の奥から現れたのは幼馴染の刺牙 天音、彼女の表情は心配そうに理人を見つめていた。
「く、訓練で疲れちゃって!天音はどうしたの?」
意味もなくよくわからない罪悪感に似た感情に襲われて聞かれてもいないのに言い訳じみた事を話してしまう。
「そう…なのね、遅いから心配して来ちゃったわよ。」
理人の様子がおかしいことなど幼馴染な天音は見た瞬間に分かっていた…同時に今はなにも聞いて欲しくないという事も。
「よいしょ」
「……」
天音は理人の横に同じ様に座る。
お互い…何も言わない、ただそばにいるだけ。
しかし理人にはありがたい状況、よく理解しえた仲だからこその対応。
そのまま時間は数分流れた時におもむろに理人が立ち上がった。
「…もういいの?」
「うん…ありがと。」
「そう。」
天音も立ち上がり二人は出口へと歩み始めた、
幾分か気持ちを持ち直した理人の足取りは軽い。
「ふん、これからご飯に行くわよ!もちろんアンタの奢りでね!」
「あ、あはは…わかったよ。」
天音のおかげでガラリと雰囲気が変わり明るく訓練場から去る二人…燻る火種をそのままに。




