第九十一録:流れる平穏に。五節「朗報。」
「あんま自分を責めんなって!それに悪いことばっかじゃねーだろ?」
「それは…そうですが……」
悪いことばかりじゃない、確かにそうだ。
魔王ノ宿木との接触により勇者ノ灯火の覚醒が大幅に促され理人は強くなった。
問題は早い段階で停滞してしまったこと。
「壁さえ乗り越えりゃあなぁ…」
「高く…分厚い壁です、彼にとってこれ以上の試練はないでしょう。」
下手をすれば一年以上は停滞してしまう…理人がその状況に精神的に耐えうるか。
「出来る限りフォローはしますが…結局は本人次第です。」
「ま、大丈夫だろ。そんなヤワな奴に勇者ノ灯火なんて持てる訳ねぇんだ。」
「だといいのですが…」
「ドンと構えろ!近衛騎士団隊長だろ?」
ゼルナさんはバンッとゴルドーの背中を叩くと残りのワインを一気に呑み瓶を空にしてその場を陽気な雰囲気で去る。
「ありがとうございます。」
ゴルドーは誰もいない訓練場でそう呟く。
ゼルナの励ましと喝を受けてネガティブなメンタルを切り替える。
「んん?」
その時、ゴルドーの持つ彼方ノ鏡に連絡が入った、彼方ノ鏡を取り出し通話に出る。
「おや!ザディル!」
"ゴルドー、今時間は大丈夫か?"
「はい!問題ありませんよ、どうしました?」
"報告だ、実は────"
ザディルからの報告…それは降魔礼讃を壊滅させたと言う喜ばしい知らせだった。
「ありがとうございます!問題が一つ片付きましたね!お疲れ様です。」
"あぁ…ヨリツグさんと共に潰した。まぁ…少し問題もあるがな。"
「ですね…まさかユダ遺跡に潜んでいるとは予想外です。」
教会の聖域指定区域…ユダ遺跡。
そこに悪魔がいたとなれば色々と問題になる、
…教会はこの事実が表に出ることは絶対に阻止するだろう。
教会の信用問題で大騒ぎになる事は必至、だからこそザディルの侵入や後に騎士団が調査すると理解していたなら協会から一切の接触がない。
知らないで通すつもりか…いや、恐らくこれから行う事後調査に絡んでくるはずだ。
"ゴルドー、調査の派遣は任せていいか?"
「はい、ライラを向かわせます。ザディルはフラウリンへ?」
"あぁ、ホムンクルスたちを預けにいく。しかし…ライラか、文句が酷くなるぞ。"
「それは…まぁ仕方がないです、現状は彼女が適任ですから。」
「確かにな、報告は以上だ。」
「はい!ありがとうございました!」




