第九十一録:流れる平穏に。二節「要らない物。」
「離れるのは賛成ですけど…この惨状を放置して大丈夫なんですか?」
ハミルトンがそう言って辺りを見渡す、釣られて俺たちも周囲に視線を移す。
視界に広がる光景は…酷い有り様だった。
薙ぎ倒された木々に転がるゴーレムが四体、つまるところ生々しい戦場跡だ。
「大丈夫ですよ、アヤ。後の処理に関しては既に別の部隊へ応援を頼んでいますので問題ありませんよ。」
「やや!いつのまに!」
大袈裟な身振りをして驚くハミルトン、さすがと言うか…ザディルさんの対応の速さには助かる。
「とりあえず近場の村へ行きますか?」
「ですね。」
「よーし!しゅっぱつだー!!」
ドロシーは元気を両腕を上げて走ってレーヴァテインへと搭乗した。
夜天羅とドロシーはレーヴァテインへ、俺とメアリー、ユーリカとボタン。
飛竜にはザディルさんにハミルトン、ジンジャー、リンダ。
皆が各機体に搭乗、俺たちは再び空へ。
─────「負けましたか…カトレア。」
男がそう呟き、椅子から立ち上がり家庭祭壇にしては厳かで豪勢な祭壇。
そこに灯されていた赤い血の様な蝋燭を消した。
「所詮は欲に溺れた悪魔もどき、妥当な結果ですね。」
心底見下す様な視線と発言…そうして蝋燭を手に取り無造作にゴミ箱へと捨て去った。
「まぁ…ある程度役には立ちました。」
協力関係…そんな物は表面上での綺麗な言い換えにしかすぎない。
実際には薄氷の利害関係でしかなくリスクがあるから敵ではなかった、それだけ。
「私の力を奪うなどと考えなければ…まだ助力の価値があり得たのに。」
やれやれと首を振りため息を吐く、できれば失くすには惜しい駒…彼にとってカトレアとはその程度で自身に不利益になるのなら迷いなく捨てる。
そう男が考えに耽っていた時、コンコンコン…ノック音が響く。
「入りなさい、レニ。」
「!…失礼します、ギルバート様。」
教皇護衛部隊"戒罰執行隊"の隊長であるレニが扉を開け頭を下げて入室する。
レニは驚きを隠すことができずに少しの動揺が見てとれた…。
(…ギルバート様はなぜ私だと?)
レニが名乗る前からギルバートは扉越しに誰が訪ねてきたのかをわかっていた。
「ふふ…腐っても教皇ですから、この程度は造作もありませんよ。」
「流石はギルバート様…このレニ感服いたしました。」
レニは使える主に膝を突き首を垂れた、その雲ない敬服を態度で示すために。
「貴方がここへ来たのはカトレアの件でしょう?」
「はっ…奴は死にユダ遺跡も壊滅となりました。」
「やれやれ…彼らも派手な事をしますね。」




