第九十録:あるべき場所。一節「自首」
「君たちには本当に世話になるよ。」
「い、いえ…俺たちの問題でもありましたしアモンさんにも助けられましたからお互い様ですよ。」
懲りずに暴れようと必死なカトレアを抑え込みながらの当たり障りない会話。
それにしてなぜ…?以前にアモンさんは脱獄した悪魔に手が出せないと言った。
魂を回収しに来たにしてはカトレアはまだ生きている。
「君は今なぜ?と思っているだろう?」
「そう…ですね。」
「これは本当に意味がなかったから君たちに伝えることはしなかったのだが…そこのバカは知ってか知らずか自滅の言葉を口にした。」
自滅の…言葉?俺はアモンさんが現れてる直前のカトレアが喚いていた言葉を思い出す。
"さぁ…早く殺せよ!!いいよ!"地獄に戻ってやる!!"殺してみろよ!ホラ!!"
「"地獄に戻ってやる"?」
「正解。その言葉は脱獄した悪魔にとって自首だよ、幾ら肉体を得ようとも魂は悪魔…だから私は"連れ戻し"に来ただけさ。」
「"消しに来た"の間違いでしょ!!」
自身の怯えを掻き消し鼓舞するように声を荒げてアモンさんを睨むカトレア。
「貴様の言葉に耳を傾ける気はない、沙汰を待つがいい。」
「ひッ!!」
虚勢は一瞬にして剥がれ落ちどうにも短い悲鳴をあげて委縮した…滑稽だな、あれだけ威勢がよかったのが見る影もない。
「前の時も思うたが地獄の王、直々とはのう。」
「脱獄者の確保は私の仕事ですからね、部下に任せるわけにはいきません。」
そうか…アモンさんが王となってすぐに脱獄事件が起きた、その責任を果たしてる最中ということだろう。
「ヨリツグさん!!」
頭上から声が聞こえてくる、全員の視線が上を向く…声の主はザディルさん。
「ザディルだー!!」
にゃぁん?にゃ?
ドロシーが大きく手を振りザディルさんを迎える、しかし一体どうしたのだろうか?なにか緊急事態が起きたのか?
「……ヨリツグさん、そちらの方はお知り合いですか?」
ザディルさんが明らかに警戒しながら訪ねてきた、なるほどここへ来た理由はアモンさんか。
「すごいね、私の魔力を感じ取るとは。」
「ザディルさん、大丈夫です。アモンさんは俺たちの味方です。」
「そうですか…失礼致しました。」
ザディルさんは警戒を解いて剣を納める、一触即発の空気が霧散した。




