余談「妖霊事件」29
───十日後。
「あー…色々と大変だった。」
「お疲れじゃ!」
夜天羅に労われながら俺は書院の畳の上に寝っ転がる。
比良坂の一件が片付いた後、すぐに妖霊管理機構が運営する病院へと担ぎ込まれ隅々まで検査…という名の実験紛いな事をされた。
妖術具でも最悪と名高いコトリバコの源呪を受けて本当に解体したのかを一応調べるために三日は入院させられていた。
「お前様のいない三日間は寂しかったのじゃ!」
「俺もだ。」
そう言いながらうつ伏せで寝っ転がる俺へ覆い被さる夜天羅。
病院でもビデオ通話はしていたがやはり直に会えないのは寂しかったし物足りない日々でたかだか三日がひどく長かった。
「おぉ?」
「誰だ…」
俺のスマホから着信音が鳴り震える、出るのが面倒に感じて緩慢な動きでスマホを取り出す…そこに表示されていた名前。
「青鐘寺さん?」
「陰陽寮のやつではないかのう。」
夜天羅を背中に乗せたそのままの体勢で俺は電話に出た、何の用だろうか?
「もしもし?」
"おー縁継くんか!すまんな突然。"
「いえ…ゴロゴロしてただけなので。」
明るく快活な声。
微かに周りの雑音が聞き取れ部下の人が忙しく働いているのがわかる。
「どうしました?」
"比良坂の件がようやっと片付いてな、報告会開くからまた来てくれへんか?"
「わかりました、いつですか?」
"明後日や!頼むで。"
「了解です。」
短い通話が終わりスマホをポッケに入れるのが億劫になりそのまま顔近くの畳に置いた。
「報告…のう」
夜天羅はゴロンと俺の上から畳に落ちて隣に寝そべる。
なにか思うことがあるのか…考えを巡らせているようななんとも言えない顔をしていた。
「どうした?」
「なんと言ってよいのか…お前様には比良坂の最期はどう映ったのじゃ?」
「そう、だな…」
比良坂の最期…か。
俺しか知らないそれを夜天羅は問うてくる、多分だが俺を心配してくれての事だろう。
相手は死霊とはいえそれを殺した…外道でもその人生を俺の手で終わらせた。
罪悪感はない、しかし心のモヤが残るのも事実。
「わしの勘じゃが、それなりに潔く逝ったんじゃないかのう。」
俺の頬を指で突きながら夜天羅がそう言った……当たっている。
比良坂は切り札である源呪が効かないとわかると抵抗を辞めた、単純に取れる手段が無かった可能性もある。
「潔くはあったが…納得してはなかったな。」
「奴からすれば不服じゃろう、しかしのう…勝手な想像じゃが本人すら自覚のない心のどこかで誰かに止めて欲しかったと思うのじゃ。」
夜天羅は'あくまでも勝手な解釈じゃ'と付け加える。
止めて欲しい…だから奴は最後に感謝し穏やかに消滅したのかもしれない。
「大丈夫じゃ、誰もお前様を恨んじゃおらん。」
「ん…ありがとう。」




