第八十九録:マッドネス 五節「口は災いの元。」
「アハ、ハハハ…ハァ…ハァ!こんな終わり方!ハァ…納得いくものか!!」
叫ぶように声を荒げて隠していたであろう銃を向けてくる。
パンッ!!
乾いた発砲音が静寂を切り裂く、白い硝煙が立ち上がるが…その弾丸はドロシーに当たる事はなかった、俺が腕を掴み防いだ。
「…こんな物で何も出来ないのはわかっているだろ。」
オーディンを失ったカトレアに対抗する手段はなにもない。
抗う術をなくし苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて怒りを振り撒く。
「お前の様な奴にッ…!あぁ!!腹が立つ!!」
ひどく暴れるが何とことない、片手で抑え込めるほどにカトレアは無力だ。
「余裕ぶって…見下すんじゃない!!なぜ殺さない!!憐んでいるつもりか!?」
憐れみか…コイツに対してそんな感情はない、過去も現在も同情する余地がない。
「カ、カトレ───」
「うるさい!死に損ないが!!お前の言葉、存在、全てが私の癪に触るんだよ!!」
声をかけようとしたドロシーに向かって感情剥き出しの恨み言をぶつける。
コイツ…自分の状況分かっているのか?
「さぁ…早く殺せよ!!いいよ!"地獄に戻ってやる!!"殺してみろよ!ホラ!!」
"その言葉を待っていたぞ"
「!?」
虚空から突如として聞こえてきた男の声に全員が驚き周りを警戒する。
いや…まてよ、この声に聞き覚えがある…まさか!───
俺とカトレアのすぐ横あたりの地面が突如として赤熱し円陣の炎が現れる。
「ア、アァ!ァァアァァア!?」
カトレアは絶叫を上げてなりふり構わず暴れ始め俺から逃れようとする。
「っ!?おま!やめろ!!」
暴れるだけならいくらでも構わないがどこに隠していたのかナイフを取り出して俺が掴む腕…つまりは自分の腕を斬り落とす気で刺した、急いで止めたがカトレアの腕からは血が滴り流れる。
この反応も無理はないだろう…カトレアにとっては会いたくもない、処刑人と言ってもいい。
怯え切った瞳、その視線の先には炎の円陣に釘付けだった。
円陣から這う様に現れた鎖。
そして──人…いや悪魔がその姿を晒した、俺たちがよく知る悪魔は一人しかいない。
「アモンさん!」
「アモンどの!?」
「やぁ、久しぶり…ってわけでもないか。」
気さくな感じで俺たちに声を掛けてくれるアモンさん。
彼と直接会うのはサタナエルの一件以来になるが…本来なら滅多に会うことのない人だ。




