第八十九録:マッドネス 二節「勝算など」
「理解できないか?」
オーディンを下敷きにして俺はカトレアへと問いかける、少し離れた場所では夜天羅とレーヴァテインが警戒して待機している。
「上から語るんじゃないよ!不愉快な!!」
叫ぶカトレア、オーディンの肩部機銃を向けるがすぐさま全力で叩き斬って破壊。
「カトレア、敗北を認めて地獄へ還れ。」
「それはできないなぁ!お前は僕に死ねと?」
「おかしな事を言う、既にあのときニックに撃たれて死んだだろ。」
コイツは…カトレアは生き返った訳じゃない、ただ悪魔になり脱獄しただけにすぎず肉体もただの借り物だ。
「生物学的には僕は生きているのさ!それが事実、お前は僕を殺すのか!?罪を犯さぬ無垢な僕をさぁ!!」
「必要があればな。」
「……チッ!豪胆な奴だ!怯えろよ!」
カトレアの脅しなど意味はない。
俺は手を汚す事を厭わない、日本にいた頃に妖霊関係で色々と経験した。
「潔く地獄へ還るなら苦痛なく送ると約束する。」
「ハッ!嫌だね!!それに勝った気になってんじゃないよ!!!」
「な!?」
背面スラスターを瞬間的に爆発させて俺ごと無理やり起き上がる、吹き飛ばされたがすぐに地面に着地した。
「醜い悪あがきだな。」
「科学者だからねぇ!!諦めの悪さに定評のある人種なんだよ!」
再び臨戦体勢になるオーディン。
少し距離を空けて俺たちは対峙する、数はこちらが有利でカトレアは一機だけだがまぁ強いな。
「もー!!そこまでなにがしたのー!?」
「ハッ…愚問だよ死に損ない、研究のために決まっているだろう?"私"の研究が正しいと証明するまでは死ねないね。」
「お前さんの研究は柏木どのと同じじゃろ?何をこだわる。」
一応だが柏木博士とカトレアは同じ研究をしていた。
自律行動可能な知能アンドロイド、それを二人は研究開発を進めていた…しかしアプローチが決定的に異なる。
「同じ?これだから低脳は困るよ、あのジジィは何を血迷ったのか魂を入れた。イカれてるよ。」
「…で、お前は?」
「"私"は魂をプログラムで作ったのさ!完璧な物をね!しかし当時の奴らどいつもこいつも節穴でねぇ…私の案は却下されたよ。」
これがカトレアの執念と怨みの根源。
否定された研究の証明、メユーリカたちは過程に過ぎない…そして恐らくオーディンに搭乗しているメアリーが完成形だろう。
「それなら自由にやるとよいじゃろう…お前さんがドロシーを目の敵にするのはなぜじゃ?」
「アハハハハ、なーんでも答えてもらえるとも思ってない?」
「別に答えなくてもいいぞ。大方の察しはつく、魂を持つアンドロイドのニックとエミリーから生まれた新しい魂だからだろう。」




