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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第四章:オーザンガール編
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余談「妖霊事件」28

静寂。

互いに話すことなど特にない、比良坂は非道な敵でいくら悲壮に塗れた過去といえど許すことも同情もできない。

ただ…俺が比良坂の立場なら?家族に夜天羅が同じ目にあったら?そう考えると非情になりきれないかと言って同情もできない、自身の矛盾を抱えた心情にモヤモヤする。


「…貴様がここにいるのはふざけた同情か?」

「どうだろうな、俺にもわからん。」

「ハッ…私から貴様への本物の呪いだ。」

本物か…神秘などではない誰でもできる呪い、それは感情や心情を惑わす。

「一つ聞きたい、死霊として生きた時間が長いとお前は言ったな。」

「答えるかは保証しない。」


そう比良坂が忠告をしてくるが俺はお構いなしに言葉を続けた。

「……もしお前の目的が成就したらどうするつもりだったんだ。」

比良坂の目的は家族と婚約者の救済。

コトリバコの汚染を取り除いた後は他者の肉体を用意してそこへ移す、これを比良坂が成し遂げだとしよう。

なら…比良坂自身はどうする?


「愚問だな、私などどうでもいい。家族を…深雪を救えればあとはコトリバコを抱えて消えるだけだ。」

やっぱりか…なんとなく予想はしていた。

コトリバコを抱えるために即身仏になる事を即断したやつならこうも考える。

「それで残された家族が悲しんでもか?」

「………愚問だ。」

「お前と同じ事を家族はするとは考えなかったのか?」

「そうだな、考えたさ。しかし家族は私ほど術に精通しているわけではない不可能だ、諦めるだろう。」


想定はしていたが…技術的にできないか、だがコイツは自分を軽く考えすぎている。

「…俺はそうは思わないな、お前の様に必死になって救おうとするぞ。」

「なにも知らぬくせに、世迷ご───」

「お前と家族の関係ならするだろ。」

「…………ッ…貴様は何が聞きたいんだ。」

「なんだろうな…俺ならどうしたかなって。」


多分だが…比良坂ほど狂気に堕ちはしないと思う、しかしその末路は同じで俺も自分の身など顧みず救う。

「ハッ!貴様は純朴で愚かだな、怒りと怨みの感情を甘く見過ぎだ。アレは人が抱えるには身に余るぞ。」

「そう…か。助言として受け取っておく。」

「私の最期が貴様の様な若造との問答で終わるとはな!」


皮肉を吐く比良坂。

いよいよ最期か…魂が尽きかけてもう消える、せめて輪廻転生を願おうにも比良坂に転生はない。

コトリバコに侵食された魂は呪いと同義、魂としてのサイクルができない。

「…こうなって……しまっ…て、無念……だ!……だが…まぁ……」

段々と言葉が拙く弱くなっていく、風前の灯となっても比良坂は言葉を続ける。


「か、か……ぞくを……救って…くれて、かんしゃ…す………る。」

「………あぁ。」

瞳を閉じた比良坂の首はもう二度と動くことはなかった、死ねば仏。

俺は比良坂の身体を仰向けにして寝かせ首も元にあった場所へ静かに置いた。

あとは黙って手を合わせる、外道だったとしても魂が消えたとしても死者への礼儀。


「じゃあな。」

最後に声を掛けて俺は比良坂邸の地下から脱出した。

外の風が肌を撫でる、空気を肺に吸い込み大きく深呼吸をする…ふと空を見上げると真上には明るい満月が輝く、晴天の夜空。

しばらく空を見ていた時、空気を叩く様な大きな音が耳を刺激する。

音の正体はヘリコプター…迎えがきた、俺をライトで照らすとゆっくりと降下してくる。

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