第八十七録:名前を呼ばれた日 五節「気分屋。」
"ハハッ、それがなんだって言うだい?後のことなんて君たちにはどうでもいいだろう?"
「……問答の意味がない。俺たちはどうでもいいと思っていない、それくらい理解できないか。」
"理解できないね、君たちは────"
「あっ!地面が見えて来たよー!!」
カトレアの声はドロシーのよく通る声にかき消され聞こえなくなる。
"……なぁんだ、死に損ないも来たのか。わざわざまた殺されに来たのかい?"
「ドロシーは死んでないよ!カトレアこそなんで生きてるの!?」
"……………"
スピーカーから声がしなくなる、姿はまだ見えないし雰囲気を察する事は難しいが…微かに苛立ちを感じる。
「あ!着いたー!!」
そんな空気などお構いなしなドロシーの溌剌とした感情が雰囲気を一変させた。
俺と夜天羅はドロシーが作り出した雰囲気に乗っかりカトレアを無視してレーヴァテインから地面へと降りた。
辺りを見渡すとそこは薄暗い格納庫の様な場所でかなり広い。
「…お前様、カトレアはこの奥じゃ。」
夜天羅の視線の先には両開きの鉄の大型扉。
アイコンタクトを取りつつ俺は刀を抜刀し警戒を高めながら歩き出し扉へと近づく。
「!?」
急に灯りが点灯し格納庫内が明るく視界がクリアになる、突然の事に驚きはしたが周りに灯り以外の異変はなかった…が───。
大型扉が自動で開き始める。
ゆっくりとした動作で開いた扉の先から…小柄な頭にツノが生えた男と眼鏡をかけた女性が現れる。
「早かったね!対面は初めましてかな?」
「…お前がカトレアか。」
小柄な若い男の声色と悪魔の証であるツノがカトレアである証明だろう。
最初は女性の方かと思ったが…顔を見て一瞬で違うとわかった。
「エミリー…ううん、メアリー!!」
そうだ、俺たちが戦ったメアリー…ユーリカたちとは年齢が違うが明らかに面影があり成長すればこうなるだろうな。
「ん?あぁ、コレかい?柏木 美琴のクローン第一号…オリジナルメアリーだよ。」
嫌な笑みを浮かべるカトレア…対してメアリーはやはり感情などがないのか無表情で佇んでいる。
「…で、生身で出て来てどうするつもりだ?」
俺はカトレアにそう問いかけながら刀を向けるとメアリーが少し前に出てカトレアを庇う。
「ひっどいなぁ!まぁ戦えないけど。」
カラカラと笑いながら答えるカトレアからは明らかな挑発と侮蔑を感じる。
自身で戦えない事をひけらかす…奴を叩くなら今だがカトレアを倒す事はできない。
確実にメアリーからの横槍が入り上手くは行かないだろうしカトレアは狡猾な奴だ。
何の策もなしにこうして俺たちと対面などしない。
二重、三重の策は用意しているはずだ。
「ならその身を晒してわしらと話す理由はなんじゃ?」
「えー?気分かな!」
「嘘だな、どうせドロシーに何かしたかっただけだろ。」




