第八十六録:ホムンクルスの夢 三節「超えた先。」
「うぅ〜!!」
ブラックボックスの解体を開始してはや一時間以上は経っただろうか。
その強固さにドロシーは悪戦苦闘を強いられている、まず初めに取り掛かったのが自爆機能と通報機能の停止だった。
前者は言わずもがな、通報機能はブラックボックスへ侵入された際にカトレアに通知が飛び強制的にメアリーの中から弾き出され場合によっては自爆機能も作動させられてしまう、最悪な事に通報機能が最も厄介。
「ほんとにもー!!!」
ブラックボックスの解析を進める為にドロシーはさらに力を行使、データの解析に集中。
それはドロシーにもトトにさえ負担が掛かる行為、もしどちらかが欠ければダメージを受けてしまう。
故に必要以上に慎重にならざる得ない。
静かで孤独な戦い…だが支えてくれる人がいる、この戦場に立つ事は出来なくともドロシーに勇気を与える。
「負けないもんねー!!!」
だから決して心が折れることはない。
ドロシーはデータ処理能力を限界まで引き上げていく、自身の痛みなど無視して…。
その尽きる事のない原動力が閉ざされた箱へ注がれてゆく、そして────ついに剥がれ始めた。
「あっ!!」
ついに通報機能は停止。
ブラックボックス解体への第一歩が踏み出された、これは大きな一歩だ。
一度ブラックボックスに亀裂が生じてしまえばあとはなし崩し的に進む、活路を見出したドロシーの顔は希望に満ちていた。
「いっくよーー!!!」
勢いに任せてさらに力を込めていく、すでにドロシーは限界を超えている…しかし力尽きる様子はない。
限界を超えて力を使い果たした様子ではなくドロシーは壁を超えて急成長を遂げた。
その成長は誰にも止められない、どこが限界なのか本人すら理解していない。
ただ、ただ…今は─────赴くままに。
「絶対に助けるからね!!」
ひたすらに目の前の壁を正しい手順で異常な速度で解き解体する。
「やった!!」
ドロシーは箱の上部へ視線を向けて歓喜の声を上げる、欠けていた。
本来なら箱の角がある箇所が欠け始めた、目に見える変化が現れ始める。
「もっと!!もーーっと!!!」
止まらない、己の限界を超えたドロシーは常に上限を求める、それはさながら無限のアクセル。




