第八十六録:ホムンクルスの夢 二節「せまい箱の中。」
ドロシーはメアリーたちに近づき腕に抱いた小型ゴーレムのトトが四本のコードを取り出しメアリーたちの右耳の後ろあたりに接続。
「……ッ!」
ここにきて初めてメアリーたちが反応を示した、微細な変化ではあるがいままで無だった者には重大な変化だろう。
「じゃあ!いくよー!!」
トトに手をかざして瞳を閉じたドロシーは意識を集中させてその場に座り込み制止。
にゃぁんにゃん。
座るドロシーの隣にコイスケも静かに座った、俺たちは不用意には近づかない…いや近づけない。
メアリーがどう動くのか警戒しないといけない、歯痒さはあるが何かあればコイスケが知らせてくれる。
「わしらはひたすら無事を祈るしかないのう」
「大丈夫だ、成長したドロシーを信じよう。」
「うむ!」
─────白い、部屋。
上も下も……右も左もない空間、ドロシーはそこにいた。
メアリーの中には文字通りに何もない、あるべき心の心象が存在しない。
「…なんにもない……ううん、許して…くれないんだ…」
寂しそうにそう呟くドロシーがメアリーの中から読み取れた情報…それは残酷な物に他ならなかった。
ドロシーはメアリーを見つける為に前に進んでいく。
メアリーには感情がない、それは正しい。
だが…そもそもが持つ事を許されていない、感情を感じる器官がないわけじゃない。
徹底的に抑制され記憶さえもコントロールされ感情を培うに必要な物が取り上げられカトレアの思い通りに動く人形でしかない。
「あった……」
何もない白い部屋を進んでいた時、突如として現れた黒い壁が行手を阻む。
「これが…セキュリティ……ひどい……」
ドロシーが見つけた黒い壁へと触れ構造を読み取る…その正体はブラックボックス。
「こんな……!閉じ込めてめちゃくちゃ!」
両手を握り震えるドロシーは怒りを露わにする、許せるはずがない。
このブラックボックスに人としての記憶、感情、思考、その全てを詰め込んでいる。
それは成長し続ける人にはあまりに小さな箱。
「…今……ドロシーがだしてあげるからね!」
バンッと両手をブラックボックスに手を付けたドロシーが箱の解体を始めた。
「っ……ほんとーにひどい!!出口も作ってない!外から触る事もダメ!箱の中の事なんてなんにも考えてない!!」
ブラックボックスはもはや溶接した鉄の箱と同じだ、何もかもを中に閉じ込めて蓋をする。
無理やり破壊もできない、壊そうにも中の物を傷をつけて取り返しがつかない事態になる、オマケに中から出ようにも自爆する仕様。
そうなる様に設計されている、徹底的に閉じ込める事へ特化した箱。
……それでもドロシーは必死で糸口を探してどうにかしようとする。




