余談「妖霊事件」22
「……わたしを殺すなら好きにすればいい、だが罪のない家族たちの魂はどうなる!?殺すのか!?無垢の魂を!!」
感情を発露、絶叫の様な比良坂の訴えには鬼気迫る勢い。
俺は隣にいる青鐘寺さんへと視線を向けた…その表情は変わらないが視線から僅かな憐れみを感じた。
「無垢、ね。お前のせいで勝手に共犯にされとるやん。」
「共犯だと?人を殺して魂を供給した事か?ただ食べる物が人かそれ以外かなど些事だろう!!」
「わたしには身を捧げてまでもやり遂げる目的がある!!」
コイツは本気で言っているのか?
人を殺す事が些事だと?思考が狂っている…怨嗟に呑まれ縋った先には地獄、畜生に堕ち自分には崇高な目的があると錯覚しているに過ぎない。
「…そんために何百何千を殺してきたか?」
「ハハ!そこまで殺してはないさ!昔は勝手に争って死んでたからな!だが…ここ百年は平和すぎるからな。」
挑発する様に青鐘寺さんの言葉に訂正を入れる、平和だから殺した…コイツが存在していい理由が消えてゆく。
比良坂は世の中とは真逆に位置している、世の中が荒れていれば比良坂は平和だろう。
「さよか、数はどうでもええねん。お前が人を殺したという事実だけであかんわ。」
「なら殺すか!?わたしを!コトリバコを内包したこのわたしを!!」
「は!?」
俺は驚きの声を上げた、コトリバコを内包!?なら比良坂自身が呪いになっている?
「君は知らないみたいだね…どうだい?説明でもしてあげたらどうだ?」
「縁継くん、さっき…即身仏になって器になったってゆうたやろ?」
「………まさか、コトリバコごと?」
「そ、鎌倉時代最強でもコトリバコの呪いを受けた魂をコトリバコから引き離されへんかったみたいやな。」
「ハハ!自分たちにはできるとでも?思い上がりも───」
「できるで。」
青鐘寺さんは比良坂の言葉を遮りゆっくりと親指で自身の背後を指差す。
そこには吉田さん…だが様子がおかしい、俺たちなど眼中にない様子で何かに集中している。
「構造……再現………抽出………違う…」
ブツブツと独り言を呟き忙しなく手を動かし筆を紙に走らせてゆく。
「その女…まさか!」
「ご明察。ほんもんの妖術師や。」
「できた!できました!!」
急に大声をあげて顔を上げる吉田さん、俺と青鐘寺さんと目が合う。
すると状況を理解したのかみるみると顔が青ざめていった。




