第八十四録:過大評価 四節「底なし」
「………」
「………」
名を呼ばれたにも関わらず彼女たちに動揺などの揺らぎはない。
…それもそうだろう、憐れな落とし子たち。
内情を知った私の感情は憐憫だ。
これなら事前にヨリツグさんに聞いた脳髄が組み込まれた化け物だったのならどれほど楽だっただろう。
「……中途半端が1番酷い。」
"ねぇ…ザディル…ドロシー戦わなきゃダメ?"
「そう…ですね、貴女の気持ちは察して余りあります。」
情報を得た時からこうなる事は予想していた、それも仕方がない。
私の魔剣術式は"ザ・ライブラ"はファフニールを発動した操剣を他者に触れさせる事で
情報の共有が可能な物。
彼方ノ鏡との違いは言葉にできない弱点や仔細な情報までその全てを即座に直接的に伝達し理解させる事ができる支援向きの術式。
ゆえに使用者である私にも相手にも多少の負担は強いるが伝達と理解をさせる。
そう…強制的に理解をさせ一瞬で情報を戦闘に組み込む事が可能。
メアリー…少女のホムンクルスにしてあのゴーレムの操縦者……いや違うな、棺桶に納められたいわば生体部品。
感情などない、ただ生きて正しい判断をして神聖防御の糧になれば良いだけの存在。
「……ではレーヴァテインで支援してください、助けれるように尽力しますが期待はしないでください。」
"わ、わかった…ザディルごめんね…"
「大丈夫ですよ、あまり気負わないでください。」
「こんな事を言っても…貴女たちの心に響く事はないでしょう。」
一方的な同情もしよう、憐憫もしよう…しかしそれでこの魔剣が鈍る事はない。
「貴女たちはまだ引き返せます、矛を納めませんか?」
「………」
「………」
返事が返ってくる事はない、それは情報を持つ私にはよくわかっているが…期待せずにはいられなかった。
言葉の代わりに返ってきたのは冷たい銃口、それが私に向けられる。
「残念です…生きていたら一考してください。」
その瞬間、銃口から火が上がり弾丸が命を刈り取ろうと向かってくる。
私はファフニールを構えてそれを迎え撃つ。
…こんな気が重くなる戦闘はいつぶりだろうか。




