第九録:騎士と枢機卿 四節「思惑は霧の中。」
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「彼らに関しては私達から何かをする事はないです、村での生活も平和的で住人にも受け入れられています」
「そいつぁは結構!このままこっちの世界に住むのか?」
「いえ…元の世界に帰るために異界の扉を目指して旅を始めます。」
「まぁ仕方ないわよね、帰還魔法は人間限定だし」
「しかし…異邦の魔族…か」
「驚きですよね、異界にも魔族がいるんですから」
「実際は私達が魔族と呼んでいるだけで違うかもしれないが…」
ヤテンラ殿は文献に綴られている特徴と一致していたツノに赤い目、他種族にはない魔族特有の特徴だ。
「…それは置いていてだ…教会に注意しないとな…」
「えー?一人のためにそんな変な事するぅ?」
「厄介な奴はどこでもいるもんだぜ?」
教会の一部の信者は魔族を嫌う傾向にある、一般人の信者あたりはその感覚はかなり薄れてきていて過去の出来事程度の認識。
「そこで、ロッカに動きを探って貰った」
ロッカに視線を向けると私の意図が伝わり皆に数枚の紙が配られる。
「この半月、教会を調べた結果です数名の教皇を対象に絞りました。」
「…選んだ理由は?」
「何もなかったからです。対象外の者は少なからず後ろ暗い事がありました、まぁ…罪に問える様な事案ではないのでそこは安心してください」
「で、逆に何もない奴らを怪しんだの?」
「はい、他の教皇を隠れ蓑にしてる可能性が高かったので」
「…成果はあったのか…?」
「成果と呼ぶには微妙です、しかし気になる事をしている人物が一人だけ」
「…それがこの、第六教皇ギルバート・サイモンか…」
ギルバート・サイモンの書類に目を通す…孤児院へ支援、民衆への施し、治療院の設立と慣れべられた功績は教皇の名に相応しい。
「正直、理想的な教皇と言わざる得ません,でも…ボロが出始めたのはアーセナル枢機卿から教会へ異邦の魔族の報告をした後です」
アルメリアは教会へ召喚儀式の報告をしたんだろう…彼女は職務に忠実だ。
「で、表は孤児院は裏は私設機密部隊それに信者に対する洗脳の疑いか…」
「はい…信者は異常なほど魔族への嫌悪が見られ部隊については調査中に一度襲撃を受けたので憶測です、ですが何かを急いている様子でした。」
「なんで魔族が関係してるのよ?」
確かに…書類にはその辺りの記載がない、書いて残すとまずい何かがある。
「書面に残すのは危険と判断したのですが教皇の日誌や書斎には所々になにやら"魔王ノ宿木"と呼ばれるものが確認できました」
魔王ノ宿木…これが何を意味するのか、言葉の響きから我々人類にとって良くはないものなのは確かだろう…ではなぜ教皇はそれを求める?考えれば考えるほど謎でしかない。
「…謎は残りますが一先ずはギルバートおよび教会周りを警戒しておきましょう」
「じゃあ、解散?」
「ですね、お疲れ様でした」
「…お疲れ…」
「お疲れ様です!」
「おう」
「おつー、オラ!待てロッカ!」
私が終了を告げると一斉に席を立ち各々が自由に行動する…案の定ロッカはライラに捕まるとそのまま連行されてゆく、私も執務室を後にした。
──ヒューサス・エルサル村
村に訪れたのはアルメリア・アーセナル枢機卿…彼女はゴルドーの言葉を聞いた数日後の現在、あの言葉を確かめる為、枢機卿として悪しき者をから市民を救う為、義務を全うする。
目指す先はテーラーカルステ。道中、問題の魔族について聞き込みをした帰ってくる返答は肯定的で好意的な反応。
住人曰く
「魔族は初めてみたが人間の若者と幸せそうにしていた。」
「カルステさんの娘さんと楽しそうに街を歩いていた。」
「彼らは村の恩人ですよ」
否定的な言葉は一つも出てこなかった、より深く事情を知るためにも彼らが過ごす家へ足早に向かう。
歩く事数分、目的のテーラーへ到着。
お店の扉を開けた、カランと来客を告げるベルが短く響いた。
「…!、い、いらっしゃいませ」
男性の声に視線を向けた、この店の店主だろう…私の顔を見て驚いた表情をしていた。
「失礼ですがもしかして…アーセナル枢機卿様ですか?」
「その通りです、そんなに畏まらなくていいですよ。」
「いえ!そうはいきません、私どももリフロディア教会の牧師様にはお世話になっています」
…異邦の魔族は教会に近づきはしなかったものの牧師と挨拶はしたらしい、もちろん私は教会に行き牧師と話をした結果は他住民と変わらなかった。
「申し遅れました、私はリグレ・カルステです」
店主、リグレは私に握手を求めたそれに応じて軽く握手をした。
「…ヨリツグさんとヤテンラさんにご用ですか?」
「…なぜそう思うのですか?」
あの魔族の名はヤテンラというのか…
「以前、アルレッド様もお二人に用事があり来訪されたのでそれが関係しているかと」
アルレッド…彼は何をしにここにきたのか?様子を見にきた…?
「そう…ですね、その二人はどこへ?」
「…お二人は昨日ここを旅立ちました。」
そう言うリグレの表情は寂しさに溢れていた。
…誤算だ、いやアルレッドは知っていてあのタイミングで私に彼らの所在を私に教えた、仕方がない目の前リグレに彼らの詳細を聞く他ない。
「それは…彼らは何処へ向かったのですか?」
「お二人はルスティアへ向かいましたなんでも最北端へ行かねばならないと」
最北端、なるほど異界の扉へ向かった、しかし…あそこは今、前線基地のはず。
「ありがとうございます…あと彼らはここでどの様な生活を?」
返答の予想はできる、しかし知らねばならない。




