第九録:騎士と枢機卿 三節「事情」
ガチャリと寮側の扉が開き顔を出した2人の人物、1人は気だるそうにこちらへきて椅子へ。
「リブラー!副団長!お疲れ様」
「お二人ともお疲れ様です!」
「あぁ…お疲れ」
リブラーは眠たげにあくびを噛み殺して席についた、彼は私と同期でかなり説得して近衛騎士に勧誘させてもらった。
「おう!」
リブラーの後ろからやってきたのは副団長であるゼルナさん…既に少し顔がが赤いそれに…いや今は彼が片手に酒瓶を持っている事に何も言わないでおこう。
次いでバタバタと足音をたて勢いよく扉を開きズンズンと足早に向かった先はロッカ。
「ライ─」
「こんの!アホ後輩!」
「あいたい!?」
声と同時にロッカの頭を叩きバチッと乾いた音が響いた後にリッカは頭をさすり不服そうな、困惑した様な顔をする。
「ライラさん!なにをするんですか!」
「なにをじゃないわよ!アンタどこで!なんで!知ってんの!?」
ロッカの言う秘密事だろう、一体…何の秘密を知っていると言うのか?
「ワハハ!まーた男に逃げらたのか?」
酒を煽りながらライラも煽る、見事に反応して矛先を変えた。
「うっさいわね!ジジィ!どいつもこいつもあーしより弱いのがいけないのよ!」
「あーしはさっさと家庭に入って甘やかされながら暮らしたいの!!」
「ワハハ!」
なんとも邪で自堕落な欲望だろうか…彼女はその高収入の相手を探すためにここに入ったらしい。
「まぁ…その…そこまでにしとけライラ、会議を始めよう」
リブラーは会議の開始を急かすが彼の思惑はわかっている、早く終わらして寝たいだけだ。
仕事はまじめな分、私が何か言うこともない、未だにロッカを恨めしげに睨みつつライラは席に着いた
会議の後に詰められるんだろうな…
「じゃあ…会議を始めようか今回、主に異邦者についてだ 皆には各々担当の進捗を聞かせて欲しい」
今回、異邦者の育成は実力のある私達近衛騎士に一任されている。
そこで私が育成者の適性がある5人に任せたリブラーには5人、治癒系のギフト。
ロッカには6人、探知系のギフト。
ライラともう1人別任務に着いている女性騎士には11人主に女性の魔法支援系ギフト。
ゼルナさんには10人の強化系ギフト。
そして私が例外のオオザキ殿、シガ殿を担当している。
「ではまず僕の報告からします、皆さんも主にギフトの訓練加えて感覚を鍛える訓練を行っていると思います、僕のほうも成果はありました、しかし…」
「あれだろ効果の振れ幅があんだろ?」
「はい…最初は個人差かと思いましたがどうもそんな感じではない感じでして…」
「どれ、俺が後で見てやろう」
「私も助力しようロッカ」
「はい…」
不甲斐なさと申し訳なさから少し暗い顔をした一番に声をかけたのはゼルナさん。
「ワハハ!なーにしょげてんだ!お前さんの歳でこんだけできてんだ120点満点だよ、それに頼るときは頼れ!」
「ありがとうございます!」
その言葉に励まされ表情が戻る、やはり…ゼルナさんは人をよく見ている私も団長として見習わないといけない…今、酒を呑むのを辞めてくれると完璧なんですよ。
「じゃ、ついでに俺の報告だがなーんもねぇ!この上なく順調!、強化系はなんっつっても実践をやらせるのが一番だな」
変わらず笑いながら答えて酒を煽る、確かに…先日の第一回目の合同訓練もギフトの練度は好調。
「では…引き続きお願いします」
「おうよ!」
「リブラー、君の方は?」
「好調…とは言い難いな…治癒の実践は難しいそれに傷口や血に対しての耐性が低いこればかりは慣れを待つしかないな…今は魔法での模擬生物の傷を癒し相手の力の流れを知ることが主な訓練だ。」
リブラーには苦労をかけている…しかし適任が彼しかいないのも事実、彼は貴重な治癒のエキスパートで彼を近衛騎士に説得した理由の一つ。
「じゃ、あーしの番ね、んまぁ…ウチんとこが一番伸びが悪いかも魔術系が一番才能の差が激しい、一般的な基準で言えば全員上なんだけどね…魔力操作の慣れ不慣れがどうしてもねぇ…うちはメンタルケア優先にしてる」
眉をひそませながら書類を見るライラ、その様子から芳しくない事を悟る。
皆…それぞれに課題ははある、まだ1ヶ月、しかしされど一ヶ月…作戦までにどれだけ力をつけれるか。
「お前んとこはどうだゴルドー」
「私の二人は順調ですね…順調ゆえに何処かで壁にぶつからなければよいのですが」
「まぁ…そいつは無理だろうな」
「ですよね…」
空になった酒瓶を寂しそうに見つめながら答えるゼルナさん。
私が口に出したのは希望的な願望で二人はいずれ何らかの壁に絶対にぶつかる、これの対応次第で今後が決定的に変わる。
「ゴルドー…本題はアレだろう…?」
「あー…城を飛び出した魔族と異邦者ね」
「ワハハ!元気があっていいじゃねぇか!」
「隊長なにか進展があったのですか?」
口々に彼ら二人の話題を口にする、皆気にはなっている様子…無理もない、あの日ヨリツグさんが飛び出したあの日、近衛騎士全員を止め説得したのは私だ。




