第八十二録:白色の不穏 一節「意思なき者の末路」
「─────!!!」
声にならない悲鳴を上げるガーゴイル…地面へ膝をつき崩れ落ちてゆく、そこへ更なる異変が現れた。
「砂…?」
ガーゴイルの身体が崩壊、きめ細い灰の様な砂になりそれは風に吹かれて消え去る。
「これがカトレアの実験です。彼らは異常な速度の魔力循環は死した肉体を焼き切る。」
「実験か…元に戻す前の方が圧倒的に強かったですよ。」
カトレアはただ単にアスタロトとアスモデウスの強さを足しただけ。
確かに強いがそれだけで他に何もない、二人の経験、知識、技術がまったく生かされていない…ただただ表面上のスペックを上げただけだ、だからすぐに決着がついた。
「二人の魂は……」
「残念ながら消滅でしょうね。」
アスモデウスのことは何も知らない…しかしアスタロトのことは少し知っている。
だからだろうか、こんなにも感傷的な気分になっているのは。
「お前様ー!ザディルどのー!」
上空で待機していたレーヴァテインが降りてきて着陸、夜天羅たちが小走りでこちらへと向かってくる。
「二人とも大丈夫かの?」
「あぁ…大丈夫だよ。」
「少々疲れました。」
満身創痍みたいな状態ではないが…気分だけならそれに近い。とにかく疲労が酷く正直、今すぐにでも横になりたい。
「夜天羅たちも大丈夫?空も大変そうだったけど?」
「まぁ…なんともないのじゃ。」
「そんなことないですよ!!あの運転のせいで死を覚悟しましたよ!?」
ハミルトンが抗議の声を上げる、確かに…闘いの合間で注視出来なかったがすごい曲芸をしていた気がする。
「楽しかった!!!ドロシー!運転好き!!」
満面の笑みをこちらに向けるドロシー…なるほどな、夜天羅が運転していた訳じゃないのか。
「このッ……このッ!!!」
「わー!?」
鬱憤を晴らす為にハミルトンはドロシーの髪をくしゃくしゃにして乱す。
ボサボサの髪になったドロシーは急いで夜天羅の後ろに隠れてじろりとハミルトンを睨む。
「ま、何はともあれみんな無事でよかった。」
「じゃな!」
「幸いな事に次の襲撃は無さそうですね。」
「次なんかあったら撤退ですよ!撤退!」
それからは降魔礼讃は不気味なほどに動きはなかった、こちらとしても体力回復の時間が稼げてありがたいが…カトレアが何を考えているのか分からなかった。
疲弊した俺たちを叩くならチャンスだったはず、それを見逃し回復の隙を与えた。
……攻め込まれても勝てると思っているのだろうか?
ならアスタロトたち以上の戦力が待ち構えている事が予想できる、そうなれば…気を引き締めて攻め込まないといけない。




