第八十一録:逢魔 四節「黒い鼓動」
─────アスタロトとアスモデウス、その二つの闇が混じり合い上空に黒い太陽が現れる、それは卵の様にも見え脈動している。
「……」
「……」
俺たちには見守ることしかできない、手を出すのはあまりにも不確定要素が多い。
空にいる夜天羅たちも同じで滞空して様子を伺っている。
「アレ…やばいですよね。」
「えぇ、確実に危険な魔法です。」
俺たちが危機感を覚えるのは互いの状態だろう…万全とは程遠くアレから何が生まれるかは知らないが戦いになれば勝てるかはかなり怪しい…退却で手一杯の可能性が高い。
「ヨリツグさーん!!コレを!」
ハミルトンから小瓶が投げ渡された…何かよくわからないが中には淡く青く発光する液体が入っていた。
「それはポーションです、飲むと魔術効果で傷が治ります。」
「!!そんな便利な物を…いいんですか?」
「遠慮はいりません、がそれなりにデメリットはあります。」
「デメリットですか?」
「ポーションは傷の治癒を行いますが魔術効果を高めるために自身の自己治癒力を利用するので酷い疲労感に襲われます。」
なるほどな…かなりのデメリットではあるが傷が治るなら御の字だ。
パフォーマンスは落ちるかもしれないが今の状態よりは断然戦える。
俺はザディルさんとハミルトンに感謝しながらポーションを一気に飲んだ…すると身体の傷がみるみると治っていく。
だが…それと同時に疲労感が押し寄せる、まるで何千メートルも全力で走ったかの様な感覚が全身を襲う。
「大丈夫ですか…ヨリツグさん?」
「さっきよりはマシです…なにより戦えます。」
軽く体を動かしつつ答える、確かに疲労感があるものの身体はよく動く。
「ザディルさんはなにかポーションみたいな魔力を回復する道具とかないんですか?」
「魔力は自力で回復する他ありませんが…戦えますよ、操剣はできませんが問題ありません。」
魔剣を構えるザディルさん…相変わらず頼もしい人、俺も隣で刀を構えて集中する。
「ヨリツグさん…あの"降魔輪転"はあの2人のいわば奥の手です。」
「奥の手…ですか、何が起こっているんですか。」
「あれは融合と元の姿に戻ると言った方が適切ですね。」
「元の姿…つまりアスタロトとアスモデウスは元々は一人だった?」
「"肉体"はです、1つの強力な肉体から2つの身体を生み出して2人の魂を入れた…」
「…魂の融合と肉体の再生があの中で起こっているわけですか。」
「その通りです。」
悪趣味な実験の果てか…アスタロトのやつとんだ爆弾を抱えていたのか。
パキッ……
黒い卵にヒビが入っていく…殻が地面へと落ちていきずるりと中にいた者が地面へと生まれ落ちる。
新たな悪魔が立ちあがろうとしている…なんて嫌悪が溢れる生誕だろうか。
本来なら祝福すべき生誕、それが目の前で起きているはずなのに感じる感情は真逆。
嫌悪、怨念、忌避感、忌むべき存在が生まれ落ちた。




