第八十一録:逢魔 三節「輪転」
「ザディルさん!」
森から草原へ出るとザディルさんと地面に伏して動かない悪魔…アスモデウスがいた。
よかった、無事に勝った様子。
「ヨリツグさん!?大丈夫ですか!!」
俺を見て心配をして駆け寄ってくれるザディルさん、まぁ…ボロボロだから無理もない。
「大怪我じゃないですか!!」
「かなり強敵だったので…ザディルさんは流石ですね。」
それに比べてザディルさんは怪我らしい怪我はない…だが魔力関連で未熟な俺でもわかるほどに魔力を失っている。
「いえ…私はヨリツグさんのおかげで勝てました。」
「俺の?」
「はい、アスタロトを倒した事でアスモデウスが酷く動揺しました…その隙を全力で叩きました。」
アスタロトとアスモデウスは親しい仲だったのだろう…その死に動揺するほどに。
「お互いに酷い目に遭いましたね…」
「全くです。」
まだ…降魔礼讃の本拠地にすら入っていない、この二人が斥候の可能性もあるが…それはあまり考えたくはない。
もしレベルの奴らがゴロゴロ居るのなら突入は考え直さないといけない。
「お前様ー!!」
「ザディルさーん!!」
「縁継!縁継!」
空から三人の声が聞こえてくる、見上げるとレーヴァテインが旋回しながら降りてこようとしていた。
「っ!?お前様!ザディルどの!後ろじゃ!」
夜天羅の危機迫る声に俺とザディルさんは同時に振り向く、そこにいたのは───
「…………」
血塗れのアスモデウスだった。
生きているのかどうかも怪しい…それほどに生を感じさせない。
俺たち二人は急いで武器を構えた…冷や汗が流れる。
今し方全力の戦闘をしたばかり、俺は身体がボロボロでザディルさんは魔力が底が見えている。
「……ゴポッ……ガハッ……!!!」
血を吐きながらゆらゆらと幽霊のような足取りでゆっくりとこちらへ向かってくる。
そして右腕を空へと掲げたその瞬間、魔法陣が展開した。
「!!」
俺とザディルさんはアイコンタクトすらなく目的が一致、即座に行動に移し接近。
…あの魔法陣を発動させてはいけない、本能的な危機感を感じる。
「も…う……遅い……!!"降魔輪転"!!」
俺たちの動きは虚しくも術が発動、アスモデウスの周りからドス黒い闇が湧き上がり包み込む、同時に森の方からも黒い柱が現れる…あの場所は────
「アスタロトの遺体がある場所!!」
「よくない…ですね。」
ザディルさんの表情が険しくなる。
多分…俺たちは同じものを感じている、肌にまとわりつく様な悪意が圧迫感を生む。
一体…何が起きているんだ!




