第八十一録:逢魔 一節「もしも違う形なら──」
「はぁ…!はぁ…!」
刀を地面に突き刺しそれを支えにして膝をつく…しんどい戦闘だった。
しかし同時に謎の充足感と達成感が湧いてくる、こんな殺し合いしてそんな感情を感じるなんて初めてだ。
多分…心のどこかでアスタロトを認めてその矜持に共感したからだろう。
「カハ…ハッハ…実に清々しいな!やり切った!…….己が全てをぶつけた!満足だ!」
「……そうかよ。」
大の字で地面に寝転んでいるアスタロト、せの左胸からはとめどなく血が流れてゆく。
悪魔ゆえの生命力の高さで生きているが…大量出血と心臓の損傷により緩やかに確実な死へと向かっている。
「しかし…驚いたぞ!その剣!魔剣の類だったのか!最期まで分からぬかったぞ!」
「……知らん、この刀はただの刀だ。」
「ハッハ!…自身ですら自覚してなかったか!いや…ヨリツグ貴様の魔眼ゆえに知覚出来なかったのだろう!!」
「……かもな。」
少し納得をしてしまう、確かに解魔ノ瞳のせいで力が帳消しにされている可能性は高い。
そういえば…サタナエルの時も謎の黒煙が出ていた、状況はその時と似ている。
どちらも俺がダメージを受けて解魔ノ瞳の力が弱まった時に発現。
まさか…本当に魔の力を宿しているのか?
そう訝しみながら愛刀を眺めてみる、そこには変わらず美しい波紋と鉄の輝きがあるばかりだった。
「ハァ…カハッ…我の命はもう尽きる。ヨリツグ!貴様に賞賛を!」
「ありがとよ。」
死に際ですら快活で清々しい。
満足して死を迎える…それをできる人はそう多くはないだろう、しかしこの悪魔は何の後悔もなく…。
殺した俺に罪悪感を感じせる暇がないほど明るく逝こうとしている。
「あとは…まぁ…これも受け取っておけ!勝者への餞別だ!!」
アスタロトは小さな何かを投げそれを俺は空中でキャッチ、手のひらを開けて見てみる。
「これは?」
黒い…不思議な輝きをしているコインだった、コインの真ん中には不思議な紋様が両面に施されていた。
「ハッハ!それは悪魔の通貨だ…何かと融通が効くぞ!」
「何にだよ。」
「地獄でだ!」
「はっ…そうか、まぁ…ありがたく貰っておく。」
「ハッハ!達者でな!!」
俺はコインを懐にしまい振り向き歩き出す、振り返らず手だけ振りアスタロトと別れる。
かなり…ダメージを食らってしまった。
ザディルさんは継戦中…俺が向かって役に立つかわからないが行かないわけにはいかない。




