第八十録:バーサーカー 四節「ギリギリ」
────森に響く鉄の鼓動が鳴り止まない……一体、どれほど剣戟を交わしたのだろうか。
俺とアスタロトが刀剣を交えた場所は悲惨、森だというのに木々が薙ぎ払われてゆく。
互いに樹木は障壁にすらならない故に樹木などお構いなしに武器を振るう。
「ハッハ!」
心底…楽しそうにノコギリを振るうアスタロト。
その感情に俺も引っ張られそうになる、殺し合いは嫌いだが戦闘自体はきらいじゃない。
だからアスタロトの気持ちが少しは理解できる。
これがもし殺し合いじゃなければ…俺も楽しんでいたと思う。
「っ!」
「クハッ!」
同時に振るった武器は互いの体を切り裂く。
俺は太腿を、アスタロトは脇腹を…深傷ではなく動きに支障はない。
互角の闘い、傷が増えていく一方で俺たちの周りには血が飛散し惨憺たる状況。
「はぁ…!はぁ…!」
「ハッハ…!」
肩で息をする、それはアスタロトも同じ…俺たちは全力でぶつかり合っている。
「感謝するぞ!ヨリツグ!我はこの日の為に友を裏切り肉体を得たのだとそう確信している!」
「…自分が死ぬかもしれないのにか?」
「愚問!生死など知らん!」
「はっ!…清々しいな。」
今度は俺から仕掛けた、低く構え接近。
低空から刀を全力で振り上げて逆袈裟斬りを狙う。
「ハッハ!…おぉ!?」
対抗する様にアスタロトはノコギリを振り下ろしぶつかるが俺の刀が押し切る。
危険を察知したアスタロト、衝撃を逃す為にわざと空中に退避し俺の攻撃をいなす。
追撃…は出来ない、分銅が弾丸の様な速さで襲いかかってくる。
「ぐっ!!」
腕でガードはしたものの鈍い痛みが左腕に走る。
アスタロトの武器であるノコギリ、その持ち手に付いている分銅鎖、それが追撃を許してくれない。
再びアスタロトとの距離が開く。
互角、何もかもが今の俺と互角の戦闘力をしている。
いつもならここぞという時にコイスケや夜天羅の支援を頼むが…アスタロトにはそれが通用しない。
コイスケの影に誘い込むのも奴なら気がつくし夜天羅の矢も効かないだろう。
本気の矢なら話は別だが…夜天羅の制約上それは難しい。
つまりは…アスタロトの言う通り一対一の決闘で決着を着ける他に術はない。
手が震えている、武者震いなどではない…激しい剣戟と身体のダメージのせいだ。
お互い…限界は近いだろう。
「ふー…」
大きく深呼吸をして脱力、余計な力を抜き柔軟に刀を振れる様に精神統一。




