第八十録:バーサーカー 三節「本質」
「………」
「黙秘しようがもう遅いだろう!なんだ!やはりアモンは変わらんな!!奴は生真面目だがどこか抜けている所があるからな!」
ハッハと笑いながらそう言う…一瞬だがアスタロト表情が郷愁を思わせる様なそんななんとも言えない顔をしていた。
「……そこまで親しいのに裏切ったのか。」
「そうだ!我は闘う自由を求めて友を裏切った!!そこに未練はあれど後悔はない!」
友を裏切った事への罪悪感はあれど脱獄という裏切り自体はもう割り切ってコイツの中ではもう既に終わった過去…。
「人間よ!その加護の使い方を教えてやろう!!」
「は?」
耳を疑った、まさか敵に塩を贈る様な真似をされるとは予想すらしていなかった。
…なにがしたいんだコイツ。
「……」
「ハッハ!そう懐疑的な目を向けるんじゃない!我は全力の死合がしたいのだ!備わっている力、互いに己が全てを賭した闘いでなければ意味がない!!」
「……そうか。」
誠実、闘いという行為においては揺るがない信念があり決して曲げる事はない。
賞賛と親しみに似た感情が湧いてくる。
殺し合いをしている敵へこんな感情を抱くのは間違っているだろう、だが…俺はこの悪魔を嫌いになれない。
「使い方は簡単だ!どちらかの手に魔力を集中させるといい、それで鎖が出てこれば成功だ!」
「……」
刀をアスタロトへ向けて警戒したままに左手へと魔力を集めて見る…すると左手に集めた魔力が変形し鎖へと変貌、鉄の重みと冷たい感触が手に伝わる。
「…本物の鎖?」
魔力で形成したにしてはあまりにもしっかりしすぎている。
「そうだ!"断獄の鎖"と言ってな!身につけている限り地獄由来の技や魔力などは効かん!!」
「……一応、感謝はしておく。」
「ハッハ!」
アスタロトが警戒するのも頷ける、地獄由来の物は効かないとなれば天敵だろう。
なにせこの鎖で拘束してしまえば何もできなくなる…まぁそれは難しいとは思うが心理時な圧は無視できる物じゃない。
「ん!?"断獄の鎖"を使わないのか人間!」
左手への魔力集中をやめて"断獄の鎖"を停止させる、魔力の供給を失った鎖は霧散し消えてゆく。
「…縁継だ。使えばそれなりに優位かもしれないが"それなり"は意味ないだろ。」
敵に自ら名を名乗るは初めてだ…俺はアスタロトへ嫌悪感なんかの悪感情があまりない。
しかし今は殺し合いをしている、感情に振り回されるな。
「………いいぞ!いいぞヨリツグ!!本質をよく捉えている!」
アスタロトは嬉々として武器を構え直し向かってくる、迎え撃つ為に俺も刀を上段に構えた。




