第八十録:バーサーカー 一節「恩義」
ガァンッ!!刀とノコギリが激しく衝突、思い感触が手に伝わる。
「ハッハーッ!!やるなぁ人間!!」
「うるせぇ!!」
殺し合いしているにも関わらずなんとも爽やかで口数の多い悪魔、アスタロトにどこか戦いにくく感じてしまう。
戦い方の相性は悪くない…むしろ刀剣での接近戦は得意だ、しかし────
「どうした!手が止まっているぞ!」
「ちっ!」
アスタロトは戦いのペースを握るのが上手い、恐らくはこれで戦いづらさを感じている。
どうにかして俺の流れまで持って行きたいが…無理だろうな良いところで拮抗状態だろうな。
「お?アスモデウスが苦戦をしているな!」
アスモデウス…あのもう一体のリーダー悪魔の名だろう、ザディルさんは上手く戦っている様で良かった。
「ふっ!!」
下段から刀を振り上げてアスタロトのノコギリを上へと弾く。
「ほほう!仲間が無事で安心したか!気合いが入ってきたな!」
だがアスタロトはそれを意に介さずそのまま振り下ろそうとする、俺は前蹴りを挟み距離を取り回避…まあまあ全力で蹴ったはずだが微動だにしない。
「剣だけではなく体術も積極的に使うか!ますます楽しいな!」
「………」
コイツとの戦いにくい理由がもう一つあった…それはやたらと俺のやる事を褒めてくる所だ。
殺し合いをしているんだぞ?試合をしているわけじゃない、負ければどちらかが死ぬ。
それをコイツは全力で楽しんでいる…生粋の戦闘狂なんだろう。
「……なぜカトレアの下につく。」
ずっと気にはなっていた。
戦う中でこのアスタロトという悪魔はカトレアの下につく様な奴ではない。
「ふむ…あやつには恩があるからな!それを返すためだ!我はこう見えて義理堅い!」
「…従兵の首を刎ねてよく言うぜ。」
「あやつは戦士のくせに逃げようとした!それは死刑に値する!」
……少し納得はいく、地球にだってかつてスパルタや日本でも敵前逃亡は死罪だった。
一から十までまで兵士。
「なら恩ってのは?」
「カトレアは我に血の通った肉体と悪魔のしがらみを解いてくれたからな!おかげでこうして戦えている!」
「くっ!」
思い一撃をいなす。
こうして喋っていても剣戟を止める事はない、軽いやり取りなど一部もない。
「そう…かよ!!」
ノコギリを払いアスタロトの左肩辺りを斬りつけるが浅い大したダメージはない。
「ふむ!良い!良い斬れ味だ!」
「ちっ!」
幸いなのはアスタロトに再生能力はない、今までに戦ってきた奴は大概持っていたからな…少し新鮮ではある。




