第七十九録:落差 五節「曲芸」
「んぎぎぎ!!」
「あはは!」
ハミルトンは必死の形相で運転に耐えドロシーは楽しみながら運転を続行。
なんと言うか…緊張感に欠けると言うか…
ま、切羽詰まるよりはマシかの。
「ヤテンラさん!なるべく!なるべく早く倒していただけるとありがたいです!はい!!」
「簡単に言ってくれるのう!」
撃ち合いが続く…拮抗、互いに当たる事はないが銃撃だけは激しさを増してゆく。
一発、両者ともに一発でも当たれば終わってしまう…つまりは先手を取った方が勝者。
「夜天羅!ハミルトン!ちょっと無茶するよ!」
「えぇ!?これ以上ですか!?」
「うん!!」
ドロシーは操縦桿をグイッと上げる、するとレーヴァテインは垂直に飛行。
「あぁぁぁぁ!!!?」
「わー!これでも付いてくる!!」
ドロシーの奇抜な行動にも関わらず猟犬の様にわしらを追うゴーレム。
「ほう!これでも避けよるのじゃ!」
垂直飛行で左右に避けにくい状態にも俊敏にジャベリンを避ける、無人機ゆえの無茶な芸当…しかし──
「一本、武器は奪ったのじゃ。」
本体に当てる事は出来なかったが二つある武器のうち一つを破壊した。
撃墜とはいかなかったがそれでも武器を奪えたのは大きい、これでやつの戦力は半減。
「うぁわ…??」
ハミルトンが気の抜けた声を上げる。
雲を抜けて急にレーヴァテインが停止、激しい重力が無くなり少しの浮遊感が体を軽くする。
「……ドロシーよ、どれくらい離れたら運転が出来なくなるのかの?」
「う、うーん…10分…とかかなぁ?そこからは自動運転!」
「よし…ドロシー!わしを上手く捕まえてほしいのじゃ!」
「え!?ちょ、夜天羅さん!?」
「わー!?夜天羅!!」
わしジャベリンを手に持ちレーヴァテインを飛び降りる、今から…あのゴーレムを欺く!
雲の中、ゴーレムの軌道を予測してジャベリンを構える…レーヴァテインを追うのなら必ずすれ違うはず。
ジャベリンを握る手に力が入る、些細な間違いで大変な事態になる…その緊張を感じながらも冷静に構える。
「!!」
下から追い抜こうしたゴーレムを捉えた瞬間、ジャベリンを思い切り連射。
大量の鉄槍がゴーレムを襲い、蜂の巣が如く穴だらけにしていく。
それと同時に雲を突き抜け落下していく、落下速度はどんどん増していき安定した姿勢をとるので精一杯になる。
「や、夜天羅ー!!!」
「ドロシー!」
雲を切り裂き現れたレーヴァテインはすぐにわしの元へと来てくれて無事に
「もー!びっくりした!!」
「はは、すまんのう…心配かけたのじゃ。」
「………ヒッ…ヒッ…」
ハミルトンはもはや茫然自失気味に意識がどっかにいってしまった。
「みん無事でなによりじゃ!」
「私をみてよくそんな事が言えますね!?」
「ほれ元気じゃないかのハミルトン。」
「うわーん!こんな事ならザディルさんと一緒にいればよかったぁー!!!」
「あはは!」
わしらは敵を倒した安堵感と達成感を胸に降下していく。




