第七十九録:落差 二節「魔剣"ファフニール"」
「あー?アスタロトのやつは楽しんでんなぁ」
森からは激しく鉄が衝突する音とたまに木々が倒れゆく悲鳴が聞こえてくる。
ヨリツグさんと悪魔が激しい戦闘を繰り広げている証拠。
「あなたは真面目にやらなくていいのか?」
「あー…アスタロトがあの人間を殺した後でもいいかな?」
コイツは2対1に持ち込んで戦闘に積極的なそのアスタロトに私を押し付ける気でいる。
「ならそんな期待はやめた方がいい、負けませんよ、ヨリツグさんは。」
剣の切先を全てアスモデウスへと向けた、戦う気の私を見てアスモデウスは深いため息を吐きつぶやいた。
「あぁ…めんどくさい。」
構えすらしないアスモデウスに向けて空中の剣全てが襲いかかる。
その気だるげな様子からは想像も出来ないほど俊敏に動き巧みに鎖を操り剣をいなしていく。
「なるほど…強いですね。」
舐めた態度を取るだけのことはある、私の操剣を初見で見切っている。
その辺の敵を倒すみたいに適当に操っているわけではない、全てマニュアルで動かして的確な行動をしているがそれでも通じない。
「いいですね…久しぶりです。」
「あー?なんか言ったか人間。」
魔剣を携えて本気を出していい相手など何年ぶりだろうか。
「お互いに様子見は済んだと言ったのです。」
「ッ!?」
私は瞬時にアスモデウスの懐に入り込み魔剣を構えた、魔剣の異質さを感じ取ったのかアスモデウスの表情が変わる。
「魔剣"ファフニール"起動。」
キィィィィン…高周波を放ち私の剣全ての連携が完了した、これで私の技は飛躍的に向上。
「手が止まってますよ?」
「ッ!迂闊だな人間!」
危機を肌で感じたアスモデウスの雰囲気がわかる、気だるげな様子は一変して本気で戦闘を始めノコギリを振り下ろすが。
「なんだ!?」
操剣の精度と威力が格段に上がったことに驚き私の対応に遅れが生じる。
「理解しました。」
「何をした!人間!」
操剣に対してではなく私が接近してアスモデウスを斬り致命傷を与えられるチャンスをわざわざ"素手で触れられた"ことへの混乱。
私はゆっくりと手袋を嵌めてアスモデウスと向き合う。
「…地獄を統べる三帝と呼ばれたアスモデウスとアスタロトが脱獄とは世も末ですね。」
「なぜ…それを知っている、何千年も前の話だぞ!?」
「さぁ?なぜでしょうね?」
「ッ!人間風情が!!」
アスモデウスは魔法の結界を張りノコギリを振り回しながら私へと猛進。
遠心力が加わり音速を超えた刃が投擲されるも半歩移動して避ける。
「私は貴方の全てを知っていますよ。」
操剣で結界を破壊…猛進を辞めて睨み合う、アスモデウスは困惑を隠せないだろう。
あの結界には弱点がありそれを突いただけだが。




