余談「妖霊事件」08
「……さぞ崇高な志があるんだろうな。」
「おぉ!その通りです!」
俺は皮肉を込め睨みつけながらそう言うしかなかった、今は少しでもこの状況を打破するための時間が欲しい。
例え比良坂がこの状況を遊んでいるとしても耐えるしか無い。
「私たちの最終的な目的はね人類の不死化だよ。」
「な、なにを…言っている……?」
困惑。比良坂の言葉は理解ができる、しかしやっている事はあべこべだ。
今まさに俺が止めている二人を殺し合わせようとしている、意味がわからない。
「覡くん、君は不死とはなんだい?」
「死なない事だろ。」
「ふむ、少し違うかな。不死とは生き続けることだよ。」
「は?」
なら一緒だろう。死なないは生き続けると同義、だが比良坂は違うと言う。
「同義だと思うかい?」
「ならこう言おうかな、幽霊は第二の生だと思わないかい?」
「っ!?」
背筋に怖気が走り鳥肌が立つ。
異常とは思っていたがその上をいくとは予想外だ、コイツは幽霊のあの状態を生きていると言う。
「幽霊は生きていない、時間の概念も記憶も形も薄れて人かどうかもわからなくなる!」
「人に拘る必要があるのかい?」
あっけらかんとまるで何が問題かわからない様な声色で俺に問うてくる。
「あるだろ!人として生きた記憶が魂を形作る、全てを忘却した魂は何になる!?」
「何もならないよ。その魂は不死でなかった、ただそれだけ。」
「はっ!イカれた選民をするために全人類を殺すのか!!」
「そうさ、私は不死の楽園を作るのさ。」
「神様気取りか!生きているお前に言われても納得できるかよ!」
「ハハ、私はとうの昔に霊体さ。」
「!?」
比良坂は顔に手をやるとまるで仮面を外す様に自身の顔を剥ぎ取った。
血はでないがその皮膚はまさしく本物とわかる。
顔を外した比良坂の本当の素顔は───ただただ黒いモヤが髑髏の周りを蠢き時折なにかの顔が複数現れては消えてゆく。
「これは見ての通り肉体が生きていた頃の皮膚と骨だよ、加工して妖力を流せば何百年でも色褪せない物になるんだよ。」
俺に自身の体の説明をしながら顔を元の位置に戻すと生きている人の様な血の通った質感に早変わり。
なるほど…すでに実践済みなわけか、それで自分と同じ事をすれば人は生きていけるわけか…だが。
「結局肉体のしがらみから離れられていねぇじゃねぇかよ。」
霊体だけでは生きていけないと比良坂は己が身で証明をしている、俺には矛盾に見える。
「ホンマにそう思うわ。」
「!?」
「!?」
俺も比良坂も驚愕の表情を浮かべるがその表情の下に隠れた意味は真逆、かたや危機感、かたや安堵感




