余談「妖霊事件」07
トサッ…二人の女性の意識を奪い強制的に動けなくして止める。
「ハハ!すごいねぇ!全く見えない!」
「次はお前だ。」
思考は冷静にしかし拳には確かな怒りを乗せて握り込む、絶対にこの狐野郎へ鉄拳をぶち込んでやる。
「ダメじゃないか、目を離したら。」
真後ろから確かな気配を感じて急いで振り返った、そこには───二人の女性が立ち上がり互いに向けてナイフを構えていた。
「っ!?」
即座に両方のナイフを掴み動けなくする…確かに意識を奪ったらずだ!少なくとも一時間は意識を───違う!二人とも無意識だ!
「ハハ、この二人はこのまま意識もなく死ぬよ…最後に意識を奪った君が殺したも同然じゃないかな?」
「詭弁にもなってねぇよ。」
「確かに!でも君の心には確実に消えない痕が残るね。」
まるで母が子に優しく注意をする様に俺を諭す…不愉快、それ以上の言葉が見つからない。
「だがそれと引き換えに確実にお前は終わりだぞ。」
「できないよ。」
「俺に覚悟がないとでも?」
「いいや君はやるよ、でもね…それは最後の最後でもうどうしようもないその時にね?しかし今はじゃない。」
「………」
厄介と青鐘寺さんが言うわけだ、この比良坂は戦闘力は無いかもしれないが徹底した呪殺師。
妖術の暗部である呪殺術に精通、依頼されれば誰彼構わずに呪いを振り撒く犯罪者。
コイツはそのトップと言っていい。
俺の情報を理解してたった数日でここまでの作戦を立ててこの場にいる。
癪だが…今は確実にコイツの手のひらで転がされているのが現状の代え難い事実。
こうやって悩んでいる今も比良坂が思う流れだろうな。
「さ、同志になるかい?それとも無惨にも無辜の民を見殺しにするかい?」
改めて突きつけられる比良坂にだけ答えがあるだけの質問…俺にとっては答えがない理不尽な質問。
「断る。」
「強情だね、そうでなくっちゃ。」
比良坂の貼り付けた笑顔の口角がさらに上がり不気味さが増す。
パチンッ…比良坂は右手で指を鳴らす。
「は?」
「さぁ…どうしようか?」
そう言って両手を広げる比良坂…背後には新たに五人の一般人が現れ最初の三人と同じく口を縫われ、ただただ混乱し涙を流す。
「ちなみに彼女彼らは無作為に選んだ人たちだ、一期一会だね。」
この外道が…何が目的でここまで人を弄ぶことができるんだ。




