余談「妖霊事件」06
比良坂はコーヒーを飲み干して席から立ち上がる…脅しか……頭にチラつくのは両親、コイツからすればむしろ両親ぐらいしか選択肢にない。
だが対策は万全だ、それをわかっていないほどコイツらも馬鹿じゃないだろう。
「今から無差別に数人殺す。」
「は?」
貼り付けた様な笑顔のまま訳のわからない事を言う比良坂、あまりにも当たり前の様にやるで日常の一幕みたいに言い放つ。
「君が同志になってくれれば見ず知らずの赤の他人は誰一人も死なない。」
そうくるか…!!無差別な人質。
タチが悪過ぎる!俺には関係ないと吐き捨てるにはあまりにも重い。
「君みたいな善人は誰でも人質になり得るから私たちの様な"テロリスト"からすればやりやすい事この上ない。」
「…そんな事を青鐘寺さんが見逃すとでも?」
コイツらは青鐘寺さんに見つかる事を恐れているし一番まずい。
「はは、確かにあの御仁に発見されるのは危険だね…でもそんな危険な真似は使い捨てにさせるよ?」
だから自分たちは見つからない自信があると…そう聞こえてくる。
「…染浜も使い捨てか。」
「正解、あれは術の消耗品だよ。特筆して何か語ることはないかな。」
「エゴイストが。」
比良坂とのやり取りで嫌な確信がある、コイツは脅しではなく本気で何人もの人々を殺害する事ができる…。
「さぁ…どうする?」
もはや選択などさせるつもりもないが自身の意思で俺が軍門に下るのを待つ。
コイツら俺が屈服をするまで殺しその有様を語るだろう、異常者め!
「…第三の選択肢だ、今すぐにお前らをぶちのめす。」
俺は解魔ノ瞳を全開放、比良坂へと瞬時に接近し拳を握り狙いを顔面へと定める。
「!?」
俺が近距離に来て初めて比良坂やフードの三人が反応したが…遅い!このまま殴って比良坂を妖霊管理機構まで連行する!
「ガハッ!!」
「なっ!?」
間に合わなかったはずだ!奴らが俺に気がついたのは拳を振りかぶったあたり。
なのに俺が殴り飛ばしたのはフードの一人だった。
「はは…酷い事をするなぁ、一般人に。」
背後から比良坂の声が聞こえ俺は殴って地に伏している奴のフードをめくる…気絶した男性だが異様なのは口が縫われ声を発する事ができなくされていた。
「ちっ…趣味の悪い。」
後ろを振り向くと余裕の表情をした比良坂、その両脇にはフードを取った人質。
二人の女性は同じく口を縫われ怯え切った瞳からは涙が溢れて止まない。
「……今からこの二人を殺し合わせるショーを開催できるんだけど…どうしようか?同志になるなら止める事はできるよ。」
変わらずの表情で俺へと選択を迫る、どうしても俺の口から合意を引き出そうとする。
……恐らくだが何かの術か契約かは不明だが合意の元で発動して合意した物に対して強制力を働かせるのだろう、だからずっと俺に選択肢を与えてくる。
「……断る。」
「じゃ、仕方がないね。」
冷徹な声が二人の女性に更なる恐怖を与え一人は過呼吸気味になり一人は縫われた口からくぐもった悲鳴をあげる。
二人は抵抗もできずにまるで自分意思で動く様に動き出した。
殺し合いなどさせるはずがない、俺は再び比良坂が追えない速度で動きそして───




