第七十七録:潜行 五節「弱音」
「そう…なんだ、心配かけちゃったね天音。」
「ほんとよ!どうなるか気が気じゃなかったわ!」
僕は上体を起こして天音を見る。
ベッド横にある椅子に座りながら腕を組みこちらへ言葉を投げかける天音、その表情は少し怒りが見えるが声色から安心感を感じ取れる。
……意識がなかった時の話を聞く限り僕のギフトがより強く暴走して覡たちを殺そうとしたらしい。
「こんな事が起きちゃうと力を使うのが怖いな….…」
「……っ」
天音は何か声を掛けようとするも言葉が出ない、しかし僕にはその気持ちだけでうれしい。
初めて…力の危険性をその身で体験した、いままで楽しくて使用していたものが改めて命を奪いうる強靭な力だと…決して安易に振るっていいものじゃないと真に理解した。
雰囲気が重たくなるのを感じて天音へ声をかけようとした時……コンコンッと扉をノックされ声が聞こえてきた。
「ゴルドーです、入りますよ。」
「あっはい!」
扉が開かれてゴルドーさんが入ってくる、鎧ではなく少しラフな格好をしていた。
「リヒトくん、体調はどうですか?」
「あ、大丈夫です。特に痛みなんかもないです。」
「それはよかったです。」
ゴルドーさんはそれを聞くと胸を撫で下ろし安心した笑みを浮かべる。
「…今回ばかりは詳しく説明してよね。」
「そうですね、他言無用でお願いしますよ。」
天音は怒りの矛先をゴルドーさんへと向いてしまう、彼女の静かな怒りを受け止めて話始める。
覡の恋人…夜天羅?と言っていたその人物が魔王ノ宿木なるいわば魔王の卵を持っており今回それに僕の勇者ノ灯火が過剰に反応をした。
「ま、待ちなさいよ!なら地球にいる時から覡の恋人はその力を持っていたの!?」
「はい、ヨリツグさん曰くその様です。」
なんとなく…あの日に覡君が城を出て行った理由が理解できた。
「だからリヒトくん、魔王ノ宿木にさえ近づかなければ君の力が暴走する事は決してないから安心して欲しい。」
「はい…わかりました。」
慰めと事実…だけど頭では納得をしていても自身へのギフトの恐怖は簡単には消えない。
身体があの感覚を覚えてしまっていている。
「今はとにかく休んで…何か美味しい物でも食べてください、全快をしたら国へと帰ります。」
身体のこともだが…ゴルドーさんは僕の心情を汲み取ってくれている。
今は身体よりめ精神的な面が不安定だと自分でも感じ取れてしまう…正直に言ってしまえば再び戦える気がしない。
もう地球へ帰りたいと言ってしまいたい、しかしそれは逃げだ。
…僕は逃げたくない。
自身の決意を固めてゴルドーさんと顔を見て目を合わせる。
「また…僕に剣を教えてください!」




