第七十六録:判明 五節「竜と嘘」
「ふぅん…….なるほどねぇ。」
ゴルドー君との密談を終えレインバレル氏への報告を済ませた、降魔礼讃の件だけはどこで誰がどんな手を使って聞き耳を立てているかわからない。
その一点以外は包み隠さずに報告。
「あのー…なんで竜族は身を隠すなんてことを?」
ハミルトンが小さく手を上げてレインバレル氏へと問うた…短い時間では説明が仕切れなかった部分…彼女は性分から気になっていたんだろう。
レインバレル氏と目が合った、話しても良いのかどうかを私に委ねている。
……話そうかどうかを迷う、降魔礼讃という不運要素が躊躇いを生むが…。
私は再びレインバレル氏へ視線を送り首を縦に振った…。
「そうねぇ…まぁ恩があった、と言ったところかしらねー」
「恩…ですか?」
「そう、大恩よ。」
レインバレル氏は椅子から立ち上がり執務室の本棚へ手を伸ばしその一冊を引き抜いた。
「貴女は竜族をどこまで知っている?」
「えぇ…と、竜の因子を取り込み発現した少数種族で魔力や魔術に精通…竜の眼を使うとか…」
「せいかーい!だけどそれは正しいわ。一つ付け加えるなら竜狩りの一族だったのよ、竜を狩り、竜を食して生きてきた"人族"なのよ。」
ハミルトンに竜族について詳しく説明をし手に持っていた本を差し出す。
「だから魔族とは違うのですね…」
「そう!他の亜人種もまぁ特殊な成り立ちではあるけど純粋な人族から分岐したのは竜族くらいかしらね。」
「は、はぁ…」
思わず本を受け取りどこか呆気に取られた様な表情と気の抜けた声を発していたハミルトン。
「あら!ちょっと話が脱線したわね!私の先代がその時の国王…2、300年前かな?魔王戦争の時に命を救ってもらってね〜。」
「で、そっから外魔が現れてその対策としてとある術式を開発するために種族を丸ごと隠す事にしたのよ。」
「そう…だったんですね…ありがとうございました。」
ハミルトンはレインバレル氏へ疑問に答えてくれた感謝を告げた……が、この話は半分以上が嘘だ。
術式なんて開発なんてしていないし恩などない、竜族を徹底的に隠蔽した本来の理由は竜族が外魔に優先的に狙われた為。
外魔への対抗手段を編み出して普及させたのが竜族。
そして、この情報を知るのは我が国のみ。
当時の世情が厳しく信頼できる我が国へ竜族を非難させた、いくら強い種族とはいえど数の暴力の前では無力…もし、我が国に避難しなければ世界大戦へ発展していた。
「では…私たちは任務へ戻ります、申し訳ありませんがゴルドー君をよろしくお願いします。」
「任せなさい。傷一つ付けないわ。」
傷か…ゴルドー君が負傷するなんて想像できないな、彼は最強だ…誰も彼もあの穏やかで優しい面に騙され過ぎている。
…もし"あの嘘の情報を信じて襲撃"があっても問題はない、むしろ敵は知ることになるだろうアルレッド・ゴルドーという騎士を。
「よろしくお願いします。」
そう言葉を返して執務室から退室、長い廊下を歩き宮殿の門を潜り飛龍の元へ。
「さぁ…終わらせにいきましょうか。」
「はい!」
手綱を握り飛龍を羽ばたかせて空へ舞う、目的地は降魔礼讃の本拠地ユダ遺跡───




