第七十六録:判明 四節「糸口」
……やはり実際に聞くと見るでは大違いだ、情報として把握はしていた。
しかし心のどこかで疑いを持っている自分がいた、表向きとはいえ途絶えたと教えられてきた…近衛騎士になり真実と経緯を知りそれが覆った。
「本日はお忙しい中でのご対応ありがとうございます。」
「いいのよ!それにあの連れてこられた異邦者の子は私たちの作戦に無関係じゃないでしょう?」
「はい、どうも魔王と勇者がぶつかってしまったようでして…」
危惧していた事が起こってしまった…まさかヤテンラさんと出会ってしまうとは予想外もいい所だ、ゴルドー君のミスと吐き捨ててしまうにはあまりにも偶然が過ぎる…最悪の奇跡だ。
ヨリツグさんとヤテンラさんに教えておくべきだったと今はそう後悔している。
あの2人にそんな予想でしかなかった情報を知らせるのは余計な心労を与えるだけだと…あえて黙ってしまっていた。
「ま、魔王?勇者!?」
ハミルトンは私とレインバレル氏の会話に疑問を浮かべるばかりだが同時に興味を惹かれている様子が見て取れる。
「アラ!この子の前で話してよかったの?」
「えぇ…大丈夫ですよ。」
「私は大丈夫じゃないですよ!?」
「では興味は無いのですか?」
「話してください!全部!」
「ンフ、アハハハ!面白い子ね!気に入ったわ!」
私はゴルドー君の所へ向かう道すがらハミルトンへ今判明している情報と状況を伝える。
「相変わらずといいますか…ヨリツグさんたちも大変ですね〜」
「まぁ…責任は感じています。」
我々の国が彼らをこの世界へと呼んでしまった…それは変えようが無いし恨まれても仕方がないと思う、だがあの2人はそんな素振りは一切見せない。
「さ!着いたわよ!」
話しているうちにゴルドー君が待機している一室の前にたどり着いた。
「開けるわよ!ゴルドー!」
レインバレル氏は声を掛けるとほぼ同時に扉を開けた、その先にはゴルドー君が椅子に座ってこちらを見て驚いていた。
…返事をしようとしたら急に扉を開け放たれてびっくりしているんだろう。
「レ、レインバレル殿!」
「ハァイ!」
非難の声を上げようとするゴルドーだがあまりにも堂々しているレインバレル氏に困惑していた。
「ザディル!ハミルトンさん!」
レインバレル氏の後ろにいた私たちに気がつき話題が一気に自分たちへ向く。
「…色々とあった様だな。」
私たちは部屋に入りゴルドー君の元へと近づく…少し暗い顔をしていたのは今回の件を引きずっているのかもしれない。
「じゃ!私は執務室にいるから話がついたらまた来てちょうだい!」
手をヒラヒラさせ扉を閉めて去っていくレインバレル氏…また後で"話の内容"を伝える必要があるな。
「オオザキ君とシガ君は大丈夫なのか?」
「えぇ…アマネさんはなんとも、リヒトさんも今の所は異常はありません。」
「不運だったな…まさか神代の遺跡に瞬間移動が施された魔道具があるなんてな。」
「いえ…私が軽率でした、事前に依頼を聞いておくべきでした!」
そう…表上の会話を進める中でゴルドー君は一枚の折り畳まれた紙片を取り出して私へと手渡されその中身を確認する。
「!?」
その内容に私もハミルトンも驚愕を隠すのに必死だった、なぜなら─────降魔礼讃のアジトと首謀者の名が記されていたからだ。
この慎重なやり取りはどこで盗聴や盗撮をされているかわからないが故の対策。
「………そう自分を責めるな"収穫"もあったのだろう?」
「はい、まず───」
目的を達成し話をほどほどに着地させて私たちは客室から退室。
「まさかでしたねザディルさん。」
「えぇ…大きな収穫です、これで次に進めますよ。」
降魔礼讃のアジトがある場所…それはユダ遺跡の最奥。
…私たちがいくら探しても見つからないわけだ、ユダ遺跡は教会の指定聖域にされており情報が全くない。
だからもし神代の遺跡だとしてもわからない、それにユダ遺跡へ出入りをした人物はギルバートだ…色々と辻褄が合ってきた。




