第七十五録:水と油 四節「脅威」
──大崎を俺へと引き付ける事は順調。
夜天羅とドロシーが乗っているレーヴァテインにはベリルさんとネーメルさんが護衛、ラグナは刺牙の保護と各々が最適な行動をとれていはいる……。
だが不気味だ、意識のない能力のだけが身体を動かしている。
何をしてくるか予想がつかない、意識があれば呼吸、視線、動き…それらから相手の思考や心情をある程度読むことができる…だがいまの大崎にはそれらが一切通用しない。
「やりにくい事この上ねぇ!」
休まずに刀剣を振るい打ち込む、少しでも隙を作れば勇者ノ灯火は夜天羅を狙う。
だからといって夜天羅を遠くに避難させる事はそれはそれで別の問題が出てくる。
一つは勇者ノ灯火がどういった挙動をするか未知な事。
加えて…この事態を利用して教会や降魔礼讃が危害を加えてくる可能性。
それらを考えると軽率に別行動はできない。
「ふっ!」
大崎の剣を弾くせの隙をつき片手で胸ぐらを掴み地面へ投げて叩きつけた。
軽くバウンドして地に伏す……剣を手放す事を期待したがそう上手くはいかないが、そのままマウントを取り行動を阻止。
「頼むから大人しくしてくれよ!」
力を込めて抵抗しようとしているが無駄だ、どれだけ力を込めようとも分散させる…こっちは完璧に力の点を抑えている。
「……?」
急に大人しくなったな…力尽きたのか?
あれだけ無茶をしてさらに湯水の様に魔力を使っていれば底をつくのも早いだろう、だがそれを確定してしまうのは早計。
しばらくはこのま────「ヨリツグ!!」
ラグナの声が響く、焦りを孕んだ声…理由はすぐにわかった。
「っ!!」
硬く握られた大崎の剣が変形、膨大な魔力が凝縮され圧縮されていた…次の瞬間。
目が眩む閃光、耳をつんざく破裂音が俺と大崎を包み込み爆発。
「ヨリツグ!?」
「理人!覡!」
巻き上がる土埃が煙幕の様に広がり二人を包み込みどうなったかの確認が取れない…ベリル、ネーメル、ラグナに緊張が走り神経を研ぎ澄ませ警戒をする。
その時、煙幕を突き破り一人が姿を現した……。
「ケホっ!あー!クソ!無茶苦茶だ!」
「ヨ、ヨリツグ!無事かい!?」
「なんとかな!軽傷だ!」
俺は全員に無事を知らせる…少しヒヤリとさせられた、あの瞬間気がつくのが遅ければかなり削られる所だった。
しかしまぁ…
「底なしか?」
あれだけ魔力を使ってまだこんな事をする余裕がある、なんて奴…いや、俺が甘く見ていただけだろうな。
魔王と対となる能力だこれだけのことをしても何らおかしくない。
「っ!やろう!!」
莫大な魔力を大崎が自爆した所から感じると同時に土煙が晴れるほどの風を巻き起こる。
大崎が空中のレーヴァテインに剣を向ける、あの魔力の塊を砲撃として最大出力で放つつもりだ。




