第七十五録:水と油 三節「勇者と魔王」
「───勇者ノ灯火よ!」
「はぁ!?」
鍔迫り合いの最中、刺牙から告げられた大崎の能力に耳を疑った…それと同時に夜天羅を狙うことへの謎が解けた。
俺は前蹴りを繰り出して距離を取る、大崎は変わらず意識はなく能力だけが暴走を続けている…いや、意識を奪ったせいで歯止めが効かなくなっていた。
「勇者…ね。」
魔王と勇者…それを繋げざる得ない、まるで魔王ノ宿木を追う様に能力がはつげんしている。
「あぁ…これが神が与えた魔王に対抗する手段か、そりゃ夜天羅をねらうわな。」
ソレイユの話を思い出す、元は神の魔王だが神は規律により手が出せない…だから人に能力を与えた、魔王に特化した力を。
「次から次へと今日は嫌になる…な!」
ガァン!!凄まじいスピードで迫る剣を弾く。一瞬の火花と鉄の共鳴、それが剣戟の始まりを告げる。
激しい斬撃の応酬、大崎の実力からは考えれないほどの威力……その代償が目に見えて恐ろしい、身体に分不相応な能力に大崎の身体が悲鳴を上げていた。
壊れた身体を無理やり回復させ剣を全力で振るう。
「クソ!面倒な!」
俺と大崎とではハンデと勝利条件が違う、圧倒的に簡単なには大崎だ。
大崎もとい勇者ノ灯火はノーハンデしかも夜天羅を亡き者にする、それだけでいい。
対して俺は夜天羅を守るのは大前提、加えて…大崎も死なせないようにして無力化する必要がある。
気絶させたのは間違いだった!
「ちっ!!」
剣戟の隙を狙って夜天羅の方へ斬撃を放とうとする、それを阻止しつつ殺さないようにするのは骨が折れる。
やはり最優先は夜天羅で邪魔する俺は二の次…全力を出せればいいがそうすると大崎の身体がボロボロになってしまう。
「人質を取られているみたいだ!」
皮肉な事に人質を助けるには人質を無力化しなきゃならない。
「ヨリツグさん!ゴルドー氏と連絡が取れました!現在、我が国からこちらへ向かっているそうです!!あと半時間堪えてください!」
「ありがとうございます!」
良い情報が入ってきた、ゴルドーさんがあと三十分でここへやって来てくれる。
どうやってオーザンガールからそんな超特急で来れたのかはどうでもいい、目的が無力化から足止めに変わった。
「なる早で頼むぜ…ゴルドーさん。」
刀を構え直して大崎と対峙、さっきまではどうしようかと思ったが…状況が俺に傾いてきた、これからは適当に刺激しつつ大崎の矛先を俺に固定するだけだ。




