第八録:達者で 三節「刻一刻と」
「そうね、撮りましょう」
「準備してこよう」
カルステ夫婦は部屋を出ていき部屋に取り残される…しばらくしてセイナさんが戻ってきた。
「準備できたからみんな隣の部屋きて〜」
にゃーんにゃ!
「はーい!」
コイスケが先に返事をする、続いてリリーちゃんが返事をして二人とも小走りで部屋に向かっていく。
「俺たちも行こうか」
「うむ!」
にゃん!
隣の部屋に向かうとかなり本格的な撮影準備をされていた。
三脚の上に設置されているカメラは地球であった昔のカメラの形をしていた、あとは椅子が二つあり、撮影布もある。
「さ、二人ともこっちに座って!」
セイナさんに促されて二人して椅子に座り俺は刀を鞘ごと持ち、杖を立てる様にする。
リグレさんはカメラから伸びているスイッチを手に持ち俺たちが座っている後ろにセイナさんと一緒に立つコイスケはリリーちゃんに抱かれ夜天羅の膝へ座る。
「じゃあ…撮りますね、3、2、1」
カシャン、カシャンと2回軽いシャッター音がした。
「終わりましたよ」
リグレさんはカメラの方へ向かうとカメラ下部から一枚の写真を取り出す。
「どうぞ」
夜天羅に手渡された写真をみんなで見る、写りのいい写真。
こうして客観的に見るとおかしな集合写真に見えなくもないが…とてもいい写真に仕上がっていた。
「ありがとうございます」
俺たちは日本に帰ってもこの服を見て、写真を見て、彼らとの穏やかな生活を思い出すだろう。
夜天羅は写真を眺めた後、大事にポーチへ仕舞う。
その後二人で客室の荷物を持ち出しリグレさんから長羽織以外の服の予備を貰い裏口へ。
「1ヶ月間お世話になりました。」
「お世話になったのじゃ」
俺たちは頭を下げてお礼をする、この家族には本当にお世話になった…衣食住にこの世界の事、全て教えてくれた。
「…こちらこそありがとう」
「また後で馬車のお見送りに行くからね」
「あとでね!!」
3人に見送られて家を後にした。
俺と夜天羅は集合場所である兵舎へ向かう、護衛の際は軍所有の馬車で前後を囲む。
その馬車は兵舎にあり兵舎から乗合馬車の駅に向かい客の搭乗を確認後、この村を発つ。
「やあ!お二人とも、待っていたよ」
兵舎に到着、準備のため外にいたメルサさん、その側には馬車と馬がいる。
「うわ!でっかい馬じゃのう!」
夜天羅が驚くのも無理はない
俺たちが想像するサラブレッドと呼ばれる種ではなく重種馬でばんえい競走の馬に似た見た目、しかしでかい
「この子たちは重い荷台を引きながら4時間も走ってくれます、それに」
メルサさんは馬に近づくと馬もそれに気づき顔を近づけて甘える。
「穏やかでいい子です」
その巨体とは違い温厚な性格。
「おっと、私は準備があるんでした」
少し落ち着きのない様子のメルサさんは馬から離れる最後に軽く馬の頬を撫でると俺たちの方へやってきた。
「その前に、改めて依頼のご説明をします。」
語られるのは依頼の詳細。
二台の馬車と八人で護衛を行う一つの馬車に兵士二名ギルド所属二名の編成。
今日は夜に四時間走らせ近隣の村へその後は朝に四時間、夕にも4時間を走りほとんどが村へ停留、問題があった場合は野宿その間の護衛の仕事としては基本は周囲を警戒して待機、馭者の交代などだが俺たちは馭者ができないので馭者の隣に座り警護と周囲の警戒。
「わかりました…じゃあ俺たちも準備を」
「え?あぁ、お二人にしてもらう事は今はないですよ?」
「さっき準備をすると言っとらんかったか?」
「それは私個人のです、お二人は時間まで待機です。」
少し暇な時間ができてしまったな…にしてもメルサさんがどことなくソワソワしている、なにか緊張しているのだろうか?
「…メルサさん、大丈夫です?」
「あ、すみません緊張しちゃって…副隊長になって初めて部下を引き連れての任務なもんで」
「あー!いたっス、副隊長!こんな所でなにしてやがるんすか!」
大声が響いた、視線を声の方へ向けると女性兵士がメルサさんに向かってズンズンと早歩きをしてくる。
身長は夜天羅より少し低いくらいだろうかそれでも一般的な女性より高い。
左右にゆらゆらと揺れる灰色のポニーテール、腰にはレイピアを携えている。
「うわぁ!ダリア!どうしてここに」
「どうしたもこうもねーんですよ!会議すっぽかしてなにやってんすか!」
「あっ」
「ん?、お二人はもしや?」
女性兵士、ダリアはこちらに気がつく、事前に俺たちの情報を知っているのだろう
「はい、縁継です」
「夜天羅じゃ」
「補佐のダリアです!よろしくお願いします。」
自己紹介をして握手をするために手を差しだすとダリアはやはりといった表情で俺の手を取る次に夜天羅へ握手。
「会議が終わり次第、出発になるっす!それまで待機で!」
そう言いい残してダリアさんは引きずる様にメルサさんを強引に連れて行った。
にゃんにゃにゃうん!!
少し暇ができたので二人でコイスケと戯れながら会議が終わるのを待つ…十五分が経った頃だろうか、メルサさんとダリアさんが戻ってきた。
「お待たせしたっすね!」
「この馬車の編成は私たち4人になります」
ありがたい、顔見知りの人がいるのは安心する実際はメルサさんが配慮してくれたんだろう
俺たちは早速馬車へ夜天羅とダリアさんは荷台へ俺とメルサさんは馭者席へ。
馬車は動き出し乗合馬車の駅へ向かう。




