余談「捜査開始。」後編
「息子と夜天羅ちゃんは多くの経験と交流をへて私たちの世界へ帰ってくるでしょう…私も妻もただ帰りを待つだけです。」
そう語る宗高氏の表情からは少しの寂しさとそれ以上の期待に満ちていた。
本当に…疑いもしない、必ず帰ってくると信じている。
「……そうですか。本日はありがとうございます、長々とすみません。」
俺と荒垣は夫妻へ挨拶をして覡家を後にした。
「結局…手掛かりはなかったスね〜」
車内で書類を片手にそうぼやく荒垣、確かに聞き取りの際にはめぼしい情報はなかった…が。
「いや、最後の最後にちゃんとゆうてたで。」
「えぇ?何か重要な事ありましたっけ?」
「宗高氏の最後の言葉や。」
「……"息子と夜天羅ちゃんは多くの経験と交流をへて私たちの世界へ帰ってくるでしょう───」
「それや。」
「これって妖界のことじゃないんスか?」
荒垣の考察は理解できる。
妖界はこの国に存在する妖怪が生活をする場所…そこへは俺たち妖霊管理機構でもそう易々と立ち入れる場所じゃない。
神秘が濃い離島に妖界はある…が、恐らくこれは違う。
そんな簡単な場所にいれば昨日の時点で発見している、例えそれが国外であろうと。
「妖界なんか生身で入られへんやろ?」
「あっ….…それもそうっスね。」
「それにこの世界におんねんやったらもう見つけてるわ。」
「まぁ…でもそうなるとこの世界にいない?」
「多分な。」
「いやぁ!流石にそれは飛躍しすぎな気がするっスよ、私たちが知らない妖界があるとかのほうが納得できるっス!」
「お前の考えもようわかるがや、痕跡ひとつ残さんと三十人以上を消すのはいくら未知の妖界といえど無理や。」
「確かに…そうっスけど。」
歯切れが悪いのは信じれないからだろう、別世界なんてフィクションでしかない。
それを信じるくらいなら自分たちの実力不足の方がまだ信用できる。
「そうなるとや…俺らじゃ手出しができひんなぁ」
「次元とかに詳しい妖怪はいないっスかね?」
「おるかもしらへんけど…俺らに応えてくれるかやな。」
「あ〜……結局手詰まりじゃないっスネかぁ〜!」
助手席で項垂れて気力を無くしていく荒垣、手詰まりか…確かにそうだろう、しかし──
「あほか、世界におらんっていゆうのがわかっただけで御の字や!こっからが俺らの仕事の本番や!」
「!…っウス!!」
気合いを入れてやるとそれが効いたのか荒垣にやる気が戻ってくる。
これから…大変な日々が来る、事後処理だけで部下が疲弊してしまうほどの大事件。
被害者家族への継続的な対応、次元へ干渉できる妖怪の捜索、類似の調査などなど…
この事件はまだ始まったばかりだ。




