第七十二録:狂進する獣 五節「変わらぬ想いにただ──」
ピィーーーーー!!!
「なんだ!?」
異様で不愉快な高音が耳を刺激してたまらず耳を押さえてしまう。
それは隊長も同じ…だがラグナだけは平気な顔をしている。
「ラグナ!?大丈夫なのか!?」
「はい、僕は対策できてますのでご心配なく!ベリルさんとネーメルさんは?」
「不愉快なだけでダメージはありません!」
「私も同じ───」
デュラハンの背後の林から巨大な何かが飛び出して現れた…それに私たち全員が警戒をした。
「……2体目ですか。」
そう現れたのは本体と同じサイズの巨大なデュラハンだった…私たちに緊張感が走る。
戦況が変わってしまった、これでデュラハンとの戦力が拮抗してしまう。
ヤテンラさんの援護射撃を加味してもだ、まずはデュラハンが倒せない謎をどうにかしない限り長期戦は免れない。
ちらりとヨリツグさんのほうへ視線を向けた、そこには敵の首を斬る姿が……しかし悪い事は重なるもので首を切り離したにも関わらず倒せない。
……どうやら状況は私たちと似た感じになっている、今以上の戦力は見込めない。
私たちでどうにかするしかない。
─────歯痒い。わしはみなが戦っているのに援護しかできない。
「……みなが負けるほどの敵ではないが、厄介な奴らじゃのう。」
旦那様の相手は再生持ちで首を斬っても再生、ネーメルどのらの相手は獣のデュラハンそれも観察する感じだと弱点が不明。
あの猛攻の中で体内の首が傷を負っていないのが不可解でしかない。
「夜天羅ー!困りごとー?」
「わしと言うより戦ってくれているみなじゃな…敵の弱点がわからんのじゃ」
「うーん…あっ!?」
「な、なんじゃ?」
わしの膝に座るドロシーは驚いた様に大きな声をあげた、そして…聞き覚えのある懐かしい声が聞こえた。
"レーヴァテインのオートバトルモードを解禁しました。"
「エミリーの声だ!」
レーヴァテインからエミリーの声がした…それは新たな機能の解放を告げる。
"ドロシー、あなたは私たちの死を乗り越えたのね…辛い…辛い思いをさせたわね。"
"愛してる、私も…ニックもあなたの幸せを願っているわ、だって私たちがあなたに与えてもらった幸せ、それをあなたにも見つけてほしいの。大丈夫そばには私たちとヤテンラにヨリツグがいるもの…じゃあね。"
「エミリー…」
レーヴァテインに残されたエミリーの遺言はドロシーへの比類なき愛で満ち溢れていた。
涙が滲む、この気持ちはドロシーと過ごしてきたわしと旦那様も理解ができる。
「エミリィ…」
涙を流すドロシー…わしはそれに寄り添い頭を撫でてやることしかできない。
「うん!ドロシーがんばる!!」
涙をぬぐいまだ泣いた跡の目立つ顔で笑顔をわしに向ける…本当に強い子じゃ。
「ドロシー…うむ!わしも一緒に頑張るのじゃ!」
「ありがと!夜天羅!じゃあドロシーたちはあそこにいこ!」
ドロシーが指差す場所は皆が戦闘している近くのビル、わしはドロシーの言う通りそこへ着地して屋上に降り立った。
「して…どうするつもりじゃ?」
「夜天羅はここから撃って!でね!レーヴァテインをヨリツグのとこに行かせるの!」
加勢…と言うことだろう、おそらくだがそう判断をしたのは先ほど解禁された機能があるからと予想がつく。
「ばとるなんとかをつかうのかのう?」
「オートバトルモード!この飛行型じゃなくて人型で戦うの!」
「ほう!」
つまりはディープ・ホワイトの時の様な形態になるわけか…それなら確かに加勢に持ってこい。
「でも今はヨリツグとヤテンラとしか一緒に戦えないの!ベリルとネーメルとラグナは情報がないからだめ!」
情報…そうか戦い方をレーヴァテインは知らない、旦那様とわしは一緒に行動して共に戦った記録があると…。
「そちらはわしに任せるのじゃ、ドロシーよ旦那様を頼むのじゃ!」
「うん!!!いっけー!!レーヴァテイン!ごーごー!!」
ドロシーの合図でレーヴァテインは自立して無人のまま飛び立つ。
「さて…わしも気合いを入れるかのう!」
羽織を脱ぎ腰に巻き弓を構える、しっかりと地に足をつき腰を据えて矢を弓へ。




