第七十二録:狂進する獣 四節「順調」
───「3体目!」
「残り3体ですね、ベリルさん。」
私のマチェットがデュラハンの芯を捉えて両断し地面に力なく横たわり本来のあるべき姿へ戻った。
…人であろうと動物であろうと遺体を盗みあるいは生者を殺して動く骸へとする魔術、それは冒涜され忌むべき物。
手早く終わらせてやるのがせめてもの他向け。
「ええ!引き続き本体の妨害しつつ小型のデュラハンを倒しましょう!」
「はい!」
ラグナとの即席のコンビだがやりやすい、無理に連携を取ろうとせず私の動きに合わせてくれる。
一拍の遅れはあるもののそこを私が補う、それがようやく形になってきて即席としてはこれ以上ないほどだ。
面倒なのは…本体がすぐにヨリツグさんの元へ行こうとする事だ。
せっかく戦いやすい状況を壊させない、あの人型と合流されれば乱戦は必死、それは避けたい。
「ッ!言ったそばから!!」
小型を私たちへけしかけて本体はヨリツグさんへ向かおうと走り出す。
それを阻止すべくマチェットの変形機構を作動させ2本を1つのブーメランへ。
魔力を込めて全力で投擲、我ながら完璧な軌道を描いて回転しデュラハンへ吸い込まれるように着弾、たまらず転倒し合流を阻止できた。
戻ってきたブーメランをキャッチし二刀へ変形、襲ってきた小型をなんなく斬り裂く。
「…子分の扱いが下手だな!」
「命令優先、そのほかを考える知能がないみたいだね。」
人のデュラハンなら下がっているがそれなりに知能を植え付けることができる。
しかし獣では指示を守らせるのが限界と見える、明らかな劣化ではあるが…
「数を用意されれば脅威だな!」
「ですね。」
特務騎士である私レベルであれば遅れをとる事はあり得ないが、一般兵からすれば脅威でしかない。
デュラハンは残った小型二体で両サイドを固めて標的をヨリツグさんから私たちへ。
排除しなければ目的が達成できないとやっと理解したらしい…けれど───
「残念だがもう遅い!」
瞬間。小型2匹が矢により貫かれ弾けた、高威力の矢…その正体。
「ナイスです!」
私は空に向けて親指を立てた、そこにいたのは飛行ゴーレムに搭乗していたヤテンラさんだった。
「これで僕たちが有利な状況になりました。」
「あぁ!あとは私たちと───」
空から舞い降り私の前に現れた人物、それはショートソードを抜刀する。
「加勢します。」
「待ってましたよ!隊長!」
私の上官であるネーメル隊長が参戦した、これで3対1で圧倒的にこちらが優位。
獣のデュラハン一体に遅れを取るなんてない。
一気に戦いを終わらせるべく私たちは一斉にデュラハンへ攻撃を仕掛ける。
特務騎士2人に加えてラグナもかなり戦闘ができる…もう一方的な戦い。
だが…おかしい、いくら攻撃を加えようとも倒れる気配がない。




