第七十二録:狂進する獣 二節「叫び」
迫り来る二体の狂獣。己が牙で俺の命を奪おうと狂気を振り撒く……舐めるなよ。
空中で身動きが取りにくいがまず左の敵から振るわれた拳を斬り裂く。
「ゴァ!?」
続け様に身を捻り首無しへ蹴りを入れて地面へ叩き落とす、奇襲をいなしてやったが…ビルへ飛び移る余裕はなく俺も地面へと着地した。
「………」
首無しはすぐに起き上がり犬の様に体を振るわせて身を整える。
「ガァ!!」
後ろから声と共に瓦礫を破壊する音が響く、首無しへ注意を向けながらも視線を背後へ向けると現れた拳は見事に再生か回復で元通りになっていた。
再生可能な人型に加えて……首無しか、予想だがコイツは獣型のデュラハンだろう。
ピィーーーーッ!!!
「っ!?うるさ!」
獣型のデュラハンはまるで遠吠えをする様な動作と共に犬笛に似た声を発する、喉がないからか食道あたりを震わせて器用に叫ぶ。
「なるほどな…本当に犬笛だったのか。」
首無しの周りの暗がりからぞろぞろと小型の首無しが俺を囲む。
小型と言っても首無し本体と比べてだ、ライオンぐらいの大きさがある…それが16体もだ、面倒だな…それに───
「ここは狭いな。」
「ヨリツグさん!!」
空中から俺の方へと来てくれるベリルさんが見える、援護に来てくれるのはありがたいが…ここはだめだ。
「ベリルさん!場所を変えましょう!レーヴァテインまで!」
「了解です!」
夜天羅たちにも伝わる様に大声を張り上げる、ちらりと確認すると夜天羅の代わりにドロシーが両手で大きく丸を作ってくれた。
「よし…」
脱兎の如く走り出す、一拍遅れて敵が俺を追い始める。
「ガァ!!ゴァァ!!」
背後からバキバキと木々を薙ぎ倒す音に紛れて肉を殴打する様な音が聞こえてくる。
「……味方同士じゃないのか?」
背後を確認すると人型の方が首無しが小型の方を薙ぎ払っていた、二体ほどが人型の餌食になり薙ぎ払われてバラバラに。
「ちっ!すんなりいかないか!」
俺の方にも小型の首無しが襲いかかってくる、それを走りながら唐竹割りに斬る。
デュラハンならこれで再生もしないはずだ…やはりか、遺体の中には頭部が埋め込まれていた。
個体差がなければ次からはもっとピンポイントで早く倒せる。
目的地へ急ぐためにさらにスピードを早めて走るが…流石は四足の獣、余裕で付いて来て攻撃を繰り出してくる。
対して人型はその膨張した筋肉が邪魔なせいで少し遅れていた。
本体の攻撃は避けつつ小型を可能な限り倒す、敵の連携が取れていないおかげで着々と数が減っていく。
走りにくく基本的に崖の様になっている街を駆け抜け、敵の攻撃を掻い潜り…ついに薄暗い場所を突破して明るい太陽が俺を出迎えてくれる。
広く見通しいい場所で敵を迎え撃ち戦うにはベスト、俺は後ろを振り返り臨戦態勢を整えた。
小型の残りは八体…人型も首無し本体もこれといってダメージや消耗はない。
「加勢します!」
「よろしくお願いします。」
右にベリルさん、左にラグナが加わる…やはり仲間がいるのは心強い。
「ネーメル隊長はヤテンラさんとドロシーと一緒にレーヴァテインを待っています!」
「了解。」
ベリルさんはマチェットを構えラグナは鋭い爪を展開、こちらの態勢に敵も迂闊に攻めてはこない。




