第七十録:接続 三節「どうして。」
───ビーッ!ビッ…不快な警告音が鳴り止み点滅していた赤いライトも普通の明かりに戻った、そして再び女性の無機質なアナウンスが流れてくる。
"以上で避難訓練を終了致します、お疲れ様でした。"
「や、やったのじゃ!ドロシーがやってくれたのじゃ!」
「あぁ…避難訓練って事したみたいだな。」
「すごいですね!」
「私たちはドアを開けて退路を確保をしてきます。」
「よろしく頼むのじゃ」
「お願いします、ドロシーが戻ってきたらすぐに合流します。」
ベリルさんとネーメルさんは扉の方へ向かい、別行動になる。
ドロシーはシステムを停止させるのではなくシステムを走らせたまま別の着地点へ誘導した。
時間がない中でしかもオレイカルコスの邪魔が入ったであろう状態、その中で一番早い解決方法で危機を回避してくれた。
コトン……小さな何かが床に当たる音が近くで聞こえた。
「ド、ドロシー?……」
そばにいた夜天羅が震える声で小さく呟いた、俺は恐る恐る視線をドロシーへ向ける。
「な…に?」
意識はパソコンの中へ入っていたものの無意識でも身体の機能は生きていてバランスを取って立っていた。
それが…それが視界に映るドロシーは冷たい床に力なく倒れていた。
「ドロシー!起きるのじゃ!!」
夜天羅は悲痛な声で名を呼びドロシーを抱えた…しかし変わらず反応がない。
嫌な汗が背中を伝う、最悪の考えが頭をよぎるが振り払う。
「ドロシー!起きろ!もうこっちは大丈夫だ!戻ってこい!」
俺も声を掛ける、効果があるかはわからないが出来ることがこれしかない…コンピュータに繋がっているか細い線が命綱、繋がっている限りは可能性がある。
俺たちは名を呼び続けた、ドロシーはただの機械じゃない感情があり魂がある。
この声も聞こえているはずだ、だから戻ってきてくれ!
「わしはまだまだおぬしと旅をしたいのじゃ!ドロシーよ頼む戻ってくるんじゃ!」
涙交じりな夜天羅の声、ドロシーの顔に涙が溢れ落ちる。
「ドロシー!まだ世界の半分も見てないだろ!だから──」
その時…俺の肩に誰かの手が置かれた、ドロシーに必死になっていて警戒心が薄くなっていた。
「っ!?」
すぐさま振り返り攻撃の姿勢を取りナイフを構えた、そこにいたのは──ラグナだった。
「お前様っ!?は…どっちだ!!」
ラグナの首元にナイフを突きつけた、いつもより声を荒げてしまう。
今の俺に相手を気遣う余裕がない、ドロシーの事で気が気じゃない。
「ハァ…ハァ…、ぼ、僕はラグナだよ。オレイカルコスとの接続が切れたから身体の主導権を取り戻す事が出来た。」
「……信じろと?」
「ハァッ…オレイカルコスは今、ドロシーの相手で手一杯さ。僕を取り戻すほどの余力はないよ。」
「だとして…俺たちに何の用だ。」
「君たちにオレイカルコスからの呪縛を解いてくれた恩返しがしたい……僕ならドロシーを取り戻す事ができる。」




