第六十九録:感情は。 二節「ありもしない代謝。」
「幻想か…それも貫き通せば現実になると思わないか?」
「否定ッ!!あり得ない!」
「なら…お前が乗っ取りをしたラグナはどんな奴だった?」
「ッ────」
俺はラグナを知らない、だが…あの瞳には善性を感じた…それにもしラグナがオレイカルコスと同じ考えなら乗っ取りなどしない共謀するだろう。
二人とも…研究者によって利用される為に生み出された者同士だ。
妄想でしかないがラグナは止めただがオレイカルコスはそれを叛逆と判断し乗っ取りをした…まぁそんな所かもしれない。
「否定ッ!一時的な代謝だッ!!」
それでもなお否定をするか…自分の尺度の破壊はオレイカルコスにとっては自我の否定に等しい。
残念だが俺の言葉は届かない…か、ニックの時の様には行かないもんだな。
「ッ──!?何をするッ!!やめろ!!」
「!?」
唐突に焦り声を荒げだした、誰に対してそんなに───。
「ドロシーか!」
この状況でオレイカルコスに対して行動を起こせるとすればドロシー以外にいない。
「なぜだ!?理解不能ッ!?僕を──」
その言葉を最後にプツンと意識を失ったオレイカルコス……死んだわけじゃないよな?
警戒をしつつ体の方へ近づいていく、そっと触れると呼吸もしているし暖かさもある…
「…ドロシーは一体なにをしたんだ?」
そう思いながら…ドロシーに会ったら開口一番謝らないと…
────時は少し戻り…
「うぐ…ぐす……」
ドロシーはわしの腕の中でうずくまったまま小刻みに震えている。
……本当はもっと…もっと準備をしてから全てを伝えるはずだった。
こんな可哀想な真似などしたくなかった、わしにはドロシーの気が済むまで好きにさせてやるしかできない。
幸いと…言ってよいのか、ドロシーはわしから離れようとはしない。
なぜかと問われれば多分…わしを信用してくれているからだと思う、ドロシーと育んだ日々はこの子の中でも大切に思ってくれている…そう思いたい。
「こいつ!好き勝手に書きやがって!!」
「ベリル、やめなさい。」
ネーメルは振り上げたベリルの腕を掴んで止めた、オレイカルコスはわしらが画面を見ていないのをいい事に好き勝手に何かを書いているんだろう。
だが…わしにとってもはやそんな事はどうでもいい、ドロシーがワシのそばにいてくれるそれだけで今は十分。
「ぐす…うぅ……ねぇ、ヤテンラ…エミリーとニックはドロシーになんて言ってたの?」
こちらを見上げるドロシーの画面には泣き顔が表示されていた…本当はもっと悲しいはずだ、涙が溢れて止まないだろう。
「二人はのう、ドロシーに生きてとそう言っておったよ。」




