第六十八録:黒幕は─ 五節「怒り」
「ニックは…わしと旦那様と戦いわしらを守る為にエミリーとニックは死んでしまったのじゃ…」
「───ッ!!」
ドロシーの…その表情は絶望感がひしひしと伝わる、わしにできるのはドロシーを抱きしめてそして思いの丈を包み隠さずに伝える事だけだ。
「黙っておいて申し訳ない!じゃが!わしらはエミリーとニックからお主を託されたのも事実じゃ!そうでなくともわしも!旦那様も!お主、ドロシーを大切に思っておる!!許さなくとも良い!恨んでもよい!わしらと一緒に居てほしいのじゃ!」
ドロシーと目を合わして真摯に伝える、自分勝手だと…そう思われても仕方がない。
「うぅ…!!嘘吐きぃ!!」
グサリと心に重く鋭く突き刺さる一言にわしは涙がこぼれそうになってしまう…がそれを耐える、大泣きしたいのはドロシーのほうだ、涙流す権利はわしにはない。
抱えられたまま…わしの胸を弱い力で叩く、いままでのどんな痛みや攻撃よりも痛い。
「すまん…すまんのう…」
「うわぁぁぁあぁぁぉあぁぁん!!」
より強く、優しく、抱きしめてドロシーの怒り、悲しみ、その全てを受け止める。
────「ドロシー!?」
俺は遠くから聞こえてくるドロシーの泣き声に不安を覚える、戦闘を実いる様子もない…夜天羅から彼方ノ鏡へ連絡もない。
「っ…クソ。」
今すぐに声のする場所へ向かたい、だがこの張り付けにしたラグナを放置もできない。
自分の選択に悪態をついてしまう。
「アハッアハハハハ!!!言っちゃった!言っちゃった!!!」
急に狂ったように笑い声を上げてそう連呼しだすラグナ、一体…なにを言ったんだ!?
俺は静かにラグナ…もといオレイカルコスを睨むことしかできない。
「知りたい!?知りたいよねぇ!???!」
「何をだ。」
苛立ちを抑えきれない、俺は刀を抜刀してオレイカルコスの首元へ刃を向ける。
「アハッ!!そぉんな態度でいいの!?ねぇ!!ねぇ!!」
「…忘れてるんじゃないか?もしもがあれば切り捨てると。」
「無垢なこの身体を殺すの!?アハハ!!」
「あぁ、殺す。」
俺はそう即答して首を頸椎手前まで刃を食い込ませる。
ラグナには申し訳ないと思う…罪悪感もある、ラグナを殺すその責任は全て俺のせいだ。
「…………」
脅しではないとそう理解したオレイカルコスは静かになり口を紡ぐ。
俺も無言で刀をより食い込ませる、刃が骨に当たる感触が伝わってきた。
「どうする?生死の選択はお前次第だ、このまま黙るなら死ね。」
警告を告げて刀に力を込めて骨に食い込ませる、ラグナには謝罪しても仕切れない。
「アハッ!!」
ニタァ…歪んだ君の悪い笑顔で俺を見上げる、オレイカルコスからは悪意しか感じられない…底なしの怨嗟に背筋が寒くなる。
「アハハハハハハハハ!!可哀想なドロシー!愚かなドロシー!!真実を知っちゃった!!」
「は?」
ドロシーが…真実を?まさか!ニックとエミリーの死をか!?なぜだ!
「ハッタリだな。」
オレイカルコスのブラフの可能性を加味して俺はカマをかける。
「アハ!僕とねぇ…ニックは同じ目的で動いてたんだよぉ!?だから知ってるさ!!」
「!?」
クソっ!!盲点だったもっとよく考えるべきだった!!そうだ、ここの機能が生きているならニックと繋がっていてもおかしくはない!!ドロシーを遠ざけるべきだった。
あの子はまだ感性が出来上がってない、そんな子に酷い事実を突きつけるなんて!暴力と言わずしてなんと言うか!!
「お前!!」
俺は刀を下げて激情に駆られてオレイカルコスの首掴み上げて壁へ叩きつけた。
「アハハハハハハハハハ!!」
よほど愉快なのか叫ぶ様に笑うオレイカルコス、悔しいがどうすることもできない。




