第六十八録:黒幕は─ 四節「抱えた重み」
「お主の目的はなんじゃ?」
"貴様ら人の根絶"
一応…返答はしてくれる様だが、目的は過去に戦ったリックと同じだった。
「そうなるには理由があるじゃろ。」
"理由など貴様らが醜悪の他にないだろう、僕はそう学んだ。"
「そうか…しかしラグナを苦しめるのは筋違いじゃないかの?」
あのラグナはここで生まれたホムンクルスの一体、そやつを傀儡の様に扱うのは違和感がある。
"あいつは人へ味方をした、庇った、同じホムンクルスがどういう扱いを受けたか理解をしていて…だから壊れるまで使い捨ててやる、これは罰だ。"
罰…か、傲慢、それ以外に言葉が出てこない。自分がまるで神になったか。
「では…お前さんがこのアキレウサスを堕としたのか。」
"そうだ、何千、何億を殺してやった。当然の報いだ。"
あっさりと…白状した、それだけの虐殺をしておいて罪の意識すらない。
いや…それどころか自分の行いに誇りにすら思っているだろう、でなければここまで堂々と話はしない。
"僕からも質問だ、お前たちはニックを殺したな?"
っ!!こいつ!ドロシーの前でなんて事を!
オレイカルコスの策略かどうかはわからない、しかしわしにとってはタブーのひとつ。
「えー!ニックは生きてるよ!!」
"おめでたいやつだな、僕とニックは情報のやり取りをしていたんだぞ?それが無くなった…この意味がわかるか?"
「…えっ、うそだもん!!」
心が締め付けられる、わしと旦那様はドロシーにニックとエミリーの死を伏せている。
それはドロシーからすれば嘘吐き、だ。
"僕とのやり取り、情報を見てそんな事を言ってるのか?人に感化され過ぎだ、見ないフリはやめろ。"
「それ以上ドロシーを脅すのはやめるのじゃ。」
つい…言葉を挟んでしまった、まだ感性が幼いドロシーにこやつの言葉は毒でしかない。
"なら自分の口で言ったらどうだ?卑怯者。"
無機質な文字…だがその裏に透けて見えるほどの下卑た笑みが浮かぶ。
「ヤ、ヤテンラ??」
わしを見上げるドロシーは懇願する様に…早く違うと言ってくれとそう訴えかける。
「っ……」
涙が出そうになる、わし一人でドロシーに死を理解してもらわねばならない。
旦那様はいない…でも伝えるしかない、ここで下手に嘘を言ってしまえば何もかもが崩れてしまう、それだけは絶対に嫌だ。
「ドロシーよ…わしの言葉を信じてくれか?」
「う、うん…」
わしは出来るだけ…ドロシーが落ち着く様に膝の上に座らせて対面になり目を合わせる。
「実はのうっ…」
言葉を紡ぐはずの口が重たい、喉は詰まった様な閉塞感が苦しい、次の言葉が…出てこない。




