第六十八録:黒幕は─ 二節「後悔のない選択。」
……俺の選択は二つ、修復をさせず完膚なきまでにオレイカルコスごとラグナを葬る。
もう一つはこの塔を機能停止させてラグナを救う道だ。
前者が一番簡単だろう、ただただ目の前の敵を殺せばいい。
後者が難しく懸念点もある、それは塔の崩壊が起きる可能性が大。
今は機能が生きているから塔自体が平衡をとっているがそれがなくなれば…起こり得る事態は想像に難くない。
「アハ…直っちゃったねぇ!どぉうする?!」
こちらを挑発する様に直った手を見せつける
、そんなふざけた様子を見て…あの理性的な瞳をして懇願するラグナの姿が脳裏に浮かぶ。
俺は…ラグナを救う道を選ぶ。
塔の機能停止後の問題もAIの支配も全部が仮定の話だ、でもこのまま何もわからないままとりあえず殺す真似はしたくはない。
そう決めて刀を構え直す、お互いが死地の間合いを警戒しながらジリジリと距離を詰める。
静かな殺意が場を包み込む、緊張が募る中で冷静さを欠いた方が後手に回るだろう。
「アハッ!!」
「っ!!」
空気を読まず静寂を破壊したのはラグナは爪で地面をなぞりながら猛進、不愉快な音と火花を散らせる。
ダンッ!!
「あ゛!?」
俺へと振り上げようとした右手の爪をその前に踏み潰して阻止、地面と骨が砕ける歪な音と感触が伝わる。
しかしそれを意に介さずラグナはすぐさま左手で追撃、対して俺は刀の背で思い切り叩き落として左手も破壊…これで両手内部の骨を粉砕。
そのまま返す刀で奴のうなじ目掛けて同じく刀背で峰打ち…頚椎の破壊に成功。
だらりと力なく地に伏せるラグナ…斬るとは違い内部を粉々に粉砕すれば修復に時間がかかる。
その証拠にラグナは地に伏したまま動こうとはしない、身動きが取れない間にに手足を縛り動かない様に拘束。
「集合!!」
俺は待機していた夜天羅たちへ声を掛けると全員がこちらへ向かってくる。
「お前様!大丈夫かの?」
「あぁ問題ない。」
「コイツがネクロマンサー!!」
武器を構えたベリルさんは拘束されたラグナを警戒、視線を外さない。
「いえ…どうやら色々と事情があるみたいです。」
「と…いいますと?」
俺はラグナとの戦闘中で得た情報と考察を全員へと共有した。
「……ヨリツグさんのお考えも状況も把握しました、しかし手放しで賛成はできません。」
「自分が甘い判断をしているのはわかっています、その上で俺は殺したくはないです。」
リスクは承知の上だ、だがこの場に並以上の強者が揃っている。
わがままを通すには十分な実力だ、だから─
「もちろん、コイツの監視は俺が引き受けます。」
「もしも、夜天羅それにベリルさんとネーメルさんに被害が出そうなら…そうなる前に俺が殺します、躊躇はしません。」
「……わかりました、私かベリルのどちらも残りましょうか?」
俺の意思が伝わりなんとか納得をしてくれた、それと監視についてネーメルさんから提案をされた。
「いえ一人で大丈夫です、ほうは探索は夜天羅とお願いします。」
「うむ、任せるのじゃ!」
「ごめんだけどよろしく。」
こうして俺はこの場でラグナの監視を夜天羅たちはフロアの探索と別行動になる。




