第六十八録:黒幕は─ 一節「寄生」
ラグナの変化に手が止まってしまう…あれは演技だと、頭の片隅でその可能性がチラつきながらも俺はラグナの言葉に耳を傾けた。
「ぼ、僕は倒せません!この…ッ、ハーツシャフト・タワーを、止めない限りッ…」
ハーツシャフト・タワー…それが均衡の塔、本来の名前か…それを塔を止めない限り倒せない?ますます意味がわからない。
抗う様に…俺には見えない"何か"へ必死に抵抗を続けている。
「…何が居て、なぜ塔を倒さないといけない?」
刀を構え警戒しつつ言葉を投げかける、無闇に近づくわけにはいかない。
何をしてくるのかわかったもんじゃない。
「オレイカルコスがッ…ぼ、ぼくを…ナノマシンで!、エー……アイ………しは、い」
振り絞る様な声に…俺を見つめるラグナの瞳は諦めに近い懇願だった。
ラグナの頭が力なく項垂れた…しかし次の瞬間。
「アハッ!?すごぉいねぇ!!意識が飛んじゃってたよぉ!!」
再び狂気的な瞳と言動が戻ってきた、そしてすぐさま俺へと攻撃が繰り返される。
振り上げられた右腕、まるで示現流みたいに一切の後の行動を考えない必死の一撃。
これが刀同士なら脅威に感じた事だろう…しかしラグナは腕だ、いくらそのナノマシンで強化したとて──
振り抜いたラグナの腕と俺の刀は鍔迫り合いなどできるはずもなく手首ごと斬り落としてやる、宙に舞う手は俺の後方へポトリと落ちる。
「あっれぇ!?切れちゃった!!」
道化だな…自分の腕が落とされたというのにこの態度、再生するには手を取りに行くしかないが俺はそんな悠長な隙を与えてやるつもりはない。
ラグナはその場から動かずにニヤニヤと笑いゆらゆらと左右に体を揺らす。
なにを────っ!!
瞬間、身を捻って回避をした…前方にいるラグナからではない。
背後から俺の頭部目掛けて攻撃を仕掛けられた…間一髪、回避が間に合う。
「避けれるんだぁ!?ますますほしいねぇ!!!君の体!!」
ナノマシンとやらを少し過小評価していた、まさか斬り落とした手が飛んで来るとは思いもよらなかった。
ラグナは飛んできた手の修復を始めた。
その俺は様子を静観する…さっきの言葉がずっと引っかかっている。
"オレイカルコスがッ…ぼ、ぼくを…ナノマシンで!、エー……アイ………しは、い“
エーアイ…恐らくはAIの事だろう。人工知能それの名前がオレイカルコスか。
ラグナはこのオレイカルコスから支配をされている…言葉をそのまま疑いなく受け取るとこうなるな…。
あのラグナの言葉が真実なら塔にいたグールたちがなぜ塔の外へ出ないかが説明がつく。
俺たちがグールと言っているだけであれもナノマシンに支配され中身が置き換えられていた…塔から出ない、いや出れない。
恐らくオレイカルコスは塔自体を支配しておりもしラグナやグールなが外に行けば支配が外れてしまう。




