余談「君の日:下」後編
…あっという間に日が過ぎていき夜天羅の誕生日当日になった。
夜天羅と2人で決めた、記念すべき日の第一回となる日。
いつもの早朝に目が覚めた、まだ朝の五時だというのに外は明るく人以外の生物は忙しなく活動をしている。
俺はルーティンとしてのランニングをしていたが今日はいつもの半分にして自宅へ戻ってシャワーを浴びてから夜天羅のいる書院へ行く。
夜天羅はまだ寝ているかもしれないので扉をそっと開けて部屋に入る。
予想通り夜天羅はまだ布団の中で寝息を立てていた、時間はまだ朝の六時だ。
夜天羅がいつも起きる時間は七時頃…豆電球が照らす薄暗い部屋で俺は彼女の横に寝転び
寄ってきたコイスケを撫でながら時間を潰す。
「んぁ……」
夜天羅がむくりと起き上がった、時間を見ると6時50分。
「おはよう。」
「おはようなんじゃ〜」
言葉を交わすと夜天羅はもぞもぞと動き出して抱きついてくる、俺も抱き返す。
「んん…」
「夜天羅、眠たくなる前に顔洗ってきな。」
寝ていて乱れた髪を梳く様に撫でた、サラサラの髪と温かな体温が心地いい。
「おぁ…そうじゃな」
抱きつくのをやめた夜天羅は布団から立ち上がり洗面所へ向かっていく。
それから朝のルーティンを2人でこなして朝食を食べた、ゆったりした時間が訪れる。
「夜天羅、誕生日おめでとう」
「んふふ…ありがとうなんじゃ!」
照れた笑顔を浮かべる夜天羅、今日が彼女にとって記念すべき日、二人で決めた大切な日だ。
この世に生まれてそれを祝う。
現代では至極当たり前な記念日…しかし夜天羅にとってはそうじゃない、生まれた時代もそうだが彼女は山へ捨てられた過去を持つ。
だからこそ今日という生まれた日を夜天羅の中で悲惨な過去から感謝される日にしたい。
「なんだか…こう、不思議な感覚じゃ。」
「不思議?」
「自分だけの特別な日を迎えているのじゃ、実感が湧かないというかのう?」
やはり…初めては違和感があるらしい、祝われるのが当たり前の俺たちにとってその感覚はわからない、しかし寄り添って抱き締める事はできる。
「おわ…!」
今度は俺から夜天羅を抱きしめた、より実感を持てる様にこの日を過ごす事に緊張がない様に想いを込める。
そのまま二人で恋人らしくイチャイチャして甘い時間を過ごす…が時間が迫ってきた。
「あっ…もうこんな時間か。」
「ん?なにか用事があるのかの?」
「まぁな、楽しみに待っててくれ。」
「!、わかったのじゃ!!」
にゃー…にゃん!
「おお!コイスケも一緒に待つのじゃ!」
コイスケは夜天羅に抱っこされて俺を見ている、そんなコイスケをわしゃわしゃと撫でてやる。




