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異世界帰還録  作者: 夜縹 空継
第一章:旅立ち
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第七録:この世界で─ 五節「前夜のノスタルジア」

二人が旅立つ日まであと3日に差し迫った日の夜俺たちは

借りている客室でゆっくりと夜の時間を過ごしていた。

あれから1週間前にリリーちゃんへ俺たちが

出ていく事をカルステ夫妻は伝えた。


案の定、リリーちゃんは嫌だと駄々をこねたが

夫妻の説得により今は何とか落ち着いている

……が、リリーちゃんは夜天羅にべったり。

彼女もいままで人との交流がほとんどなかった

今こうして他者とましてや小さい子に懐かれるのは嬉しい。

「今日もリリーと遊んでたら1日が終わってしまったのじゃ」

「仕方がない、今はリリーちゃんのケアをしてあげてくれ」

「うぅむ…お前様には色々任せてしまっおるからのう」

「いいよ、実のところそんなに準備することないし」

夜天羅は俺の隣に座り左腕に抱きついて身を寄せる。

「はー落ち着くんじゃ…」


「………」

俺は無言で夜天羅のツノに手を伸ばして触れる

ツルツルとした感触で心地いい触り心地。

「うひゃあぁ…お、お前様はもの好きじゃなぁツノを撫でるなんて」

神経は繋がっており夜天羅曰く爪撫でられる感触に似ているらしい

「なんか癖になる」

「頭を撫でてくれてもよいんじゃよ?」

「それは…ちょっと恥ずい」

夜天羅はジト目で俺を見てくる

その目はツノを触るのと何が違うのか?と言っている様だった。

俺はツノを触る手を夜天羅の頭に移す

サラサラで艶やかな髪の感触、暖かな体温が手に伝わる。

「♫〜」

笑顔で上機嫌の夜天羅。


その様子を見て俺は頭を撫でる手を頭から頬に夜天羅の顔を見る。

彼女はこちらの意図がわかっており目を閉じる

顔を近づけて俺は口づけをした。

恋人と過ごす甘い時間、二人で過ごす事の幸せを感じる。

………ニャンン

──この間、コイスケは温もりが欲しくて二人の間に

挟まりどこも見てない様な虚無の目をしていた。


──2日後。

今日は村の収穫祭

市場はいつもと違い明るい装飾で飾り特産の

茶葉を使った紅茶や茶葉を使ったお菓子なんかが振る舞われていた。

今回、カルステ夫妻は準備で忙しく

俺と夜天羅がリリーちゃんを連れて収穫祭を楽しむ。

リグレさんは申し訳ない様子だったが俺たちは快諾した。


「あれ!あっちのお店いこー!!」

「これこれ、そんなに引っ張らんでも露店(ろてん)はにげはしないんじゃよ」

夜天羅の手を繋ぎはしゃぐリリーちゃん

まるで年の離れた姉妹の様。

にゃうにゃ

その様子をコイスケと一緒に見守る。

楽しい時間はあっという間に終わり祭りの喧騒が終わりを迎えた。


──夜、日付が変わる深夜。

俺はベッドから起きる

不意に目が覚めてしまった、隣のベッドの夜天羅を

見ると静かな寝息、規則正しい呼吸、完全に熟睡していた。

夜天羅を起こさない様にベッドから立ち上がり部屋を出た。

少し夜の空気を吸いたい気分になり一階に降りて裏口に向かう。


にゃー

控えめな鳴き声が聞こえた。

足元を見るとコイスケがちょこんと座っていた

今日はリリーちゃんと一緒に寝ていたはず…。

起きて暇をしてたんだろうか。

「一緒に来るか?」

にゃんにゃ!


コイスケの返事を聞き一緒に裏口から外に出た

満点の星空と真上に登っている月、涼しい空気が肌を撫でる。

特段、散歩をするわけではない

カルステ家に設置しているベンチに腰掛ける。

コイスケは俺の膝に乗りゴロンと寝転んだ

そんな様子を見てコイスケを撫でる


…明日、いや今日の昼にはこの村を出る。

カルステ夫妻には世話になった、二人からしたら俺と

夜天羅は恩人だと思うが俺たちからしてもカルステ夫妻は恩人だ。

1ヶ月の間生活を共した、居心地がよかった

もし、仮に日本に帰れないとなったら

ここに帰って来たいなと思うほど

考えを巡らしていると声を掛けられる。


「おっまえっさま♫」

「!、夜天羅」

いつのまにか夜天羅が隣に立っていた。

俺が部屋から出た際に起こしてしまったんだろうか。

「ごめん、起こした?」

「いや、たまたまじゃよ」

そう言って俺の隣に座る夜天羅。

「…いよいよ明日じゃな」

「そうだな」

気持ちは夜天羅も同じだろう

これから二人で旅をする、まだ見ぬ困難が待ち受けてると思うと不安にもなる。

世話になった人々との今生の別れ、それは夜天羅にとって2度目だろう。

1度目は俺のご先祖である来空と2度目は今。


「わしは…ちゃんと笑顔でリリーとお別れできるかのう」

夜天羅は俺にしなだれかかる。

彼女が一番リリーちゃんと仲がよかった

俺との関係も悪くはなかったがやはり年上の異性は緊張している様子だった。

しかし夜天羅とは姉妹の様に仲が良かった、きっと相性がいいんだろう。

俺は彼女の肩を抱きしめた

「…夜天羅なら大丈夫」

なうにゃんにゃ…

コイスケは俺の膝から夜天羅に移り寄り添っていた。


雲ひとつない晴天の夜空から星月明るく照らす

俺たちはこの村での日々に思いを馳せる…

たった1ヶ月、しかし濃密な日々。

この世界に来て最初に過ごす場所がここで良かった。

閲覧ありがとうございます!

明日も更新予定ですが、本編ではなく前回の様な余談を掲載します

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