余談「君の日:上」前編
いつも通り…書院で夜天羅とコイスケと過ごす土曜日の昼下がり。
俺たちは並んで座り炬燵で暖を取りテレビで映画を見てコイスケはもちろん炬燵の中で丸くなっていた。
隣に座っている夜天羅の方へ視線だけ向ける…皮を剥いたばかりのみかん、その一欠片をつまんで口へ運ぶ。
「ん?んー」
俺の視線に気がついた夜天羅は顔を近づけて口付けをする、比喩などではなくほんのり甘酸っぱいのはみかんのせいだろう。
口付けをした夜天羅はさらに俺へ密着した。
本当にいつも通りの日常。
だが最近、一つ気になる事がある。
それは…夜天羅の誕生日、祝いたい気持ちはあるなら聞けばいいだろう。
しかし躊躇う理由は夜天羅の過去だ、幼い時に家族に捨てられたと言っていた。
夜天羅と仲が良好で上手くいってる、だからこそ聞きにくい。
彼女の古傷を掘り起こして再び生傷にしたくはないし第一に傷付けたくはない、でも聞いて祝いたい気持ちもある。
そんな悩みを抱えながら土曜日が過ぎて日曜日も過ぎていく。
月曜日、学校が終わり帰宅。
いつもの様に夜天羅のところへ向かう準備をしてからリビングにいるお袋に声を掛けるために扉を開けた。
「親父?おかえり」
「おお、縁継ただいま」
リビングのテーブルに座りスポーツ新聞を読んでいた親父が代わりにいた。
「お袋は買い物?」
「いや、檀家さんの長嶋さんに捕まっている。」
「あぁ…」
なるほどな、悪い人じゃないんだけど話が長いんだよなあの人。一回捕まったらなかなか離してくれない。
「今から夜天羅ちゃんとこにか?」
「そう」
……いやせっかくだし親父に相談してみよう、お袋もいて欲しかったが仕方がない。
「なぁ…親父、ちょっと相談いいか?」
そう言って対面の椅子に腰掛ける、正直な話…俺一人だと答えが出ない。
なら身近で信頼できる親を頼る、まだそれが許される年齢だし遠慮なく頼ろう。
「おぉ…なんだなんだ言ってみろ」
読んでいたスポーツ新聞から目を離して慣れた手つきで四つ折りに畳む。
それからメガネを外して俺を見る。
「実は────」
「なるほどなぁ……」
俺は悩んでいた夜天羅の誕生日を知りたい件を話した、全部を聞いた親父はうーんと腕組みをして考えを巡らしている。




