第六十三録:監視の眼 三節「魔王の魂」
「サタンがやられましたか…」
執務室…1人の男が大々的な見出しの広報紙を見てそう呟く、祭服を身につけたその男は─
「ギルバート様、只今よろしいでしょうか?」
扉越しに話しかけられる、祭服の男ギルバート・サイモン。
「えぇ、入りなさいレニ。」
ガチャ…ドアが開き現れたのは教皇護衛部隊"戒罰執行隊"の隊長であるレニ・クロスフォード、彼は入るなりすぐに膝をつきギルバートへ頭を下げた。
「ご報告があり参りました。」
「聞きましょう。」
レニはその体勢のまま報告を始めた。
「ネクロマンサーから奪った人皮の入れ墨が修復及び魔道具化が完了致しました。」
「そうですか…あとは聖体の準備だけですね。」
「はッ…そこで一つ提言を致したいのですが。」
フードを深く被って表情は窺えないがレニは顔を上げてギルバートの許可を待つ。
「いいでしょう。」
「ありがとうございます、魔道具"罪被り"の試運転をおこないたいのです。」
「ふむ…なるほど、ですが"罪被り"はデュラハン限定のネクロ魔術です。」
「はッ、承知しています、ですので魔物のデュラハンを作製して使用者の精度向上と欠点である魔力消費を確認したいのです。」
「魔物のデュラハンですか…なるほど考えましたね、許可をします。」
「感謝の極み…」
レニは再び頭を下げて礼を尽くす、自分の進言が受け入れられた喜びはこの上ないだろう。
「…しかし、試すのでしたらそれ相応の相手じゃなければいけませんでしょう。」
「…例の組織より情報が入りあの異邦者と魔王ノ宿木がアキレウサスへ向かうと情報を得ています。」
「彼らで試すおつもりで?」
「はい、一度あのデュラハンと戦闘をしている彼らなら急拵えだとしてもデータが取れるかと…」
「わかりました、貴方に任せましょう。」
「ありがとうございます!必ずやよいデータを取りより良い聖体を!」
レニは立ち上がり、ギルバートへ向かって祈祷する様に胸の前で十字を切る。
「期待してますよ。」
「ハッ!では…失礼致します。」
レニは扉まで行き再び頭を下げて部屋を後にした、それを見送り部屋に1人きりになったギルバートは窓から外を眺める。
「……私が力を手にするまでもう少し…もう少しの辛抱だ。」
青空を眺めるギルバートの目には憎悪が醜く渦巻いていた…悲願である神への復讐その目的のための力がもうすぐそこだ。
「たかだか数ヶ月か数年か…何百年も待ったのだ、これしきすぐだ。」
内心の高揚がギルバートを急かせる、さながら子供が誕生日の祝い事を待つ様に…しかしその高揚感を大人としての理性で押し込めていく。
事を急いて失敗などしない為にだ。




