第六十一録:向き合う者 四節「不運な重なり」
「ゔぁ゛ッ!?」
私の背中に一瞬の灼熱が走った、そして次に激痛が襲い来る。
走り出した足が止まってしまいそうになるが私は痛みに叫びたい衝動を抑えて必死に足を動かす。
背中が痛い…服が濡れて張り付く感覚、何で濡れているかは考えたくもない。
「お、おねぇさん!!」
カレンの声が遠い気がする、だけど強く掴まれた衣服とその温もりが私に強さを与えてくれる。
必死に足を動かしながらほんの少しだけ背後を確認した、魔物はまだ目を抑えており適当に振るわれた尾がたまたま当たった様子。
これなら誰かが来るまで時間稼ぎになる。
「ハァッ…だい、大丈夫だから…ね。」
私は自分の命が削られる中でカレンを必死で慰める。
このまま逃げ切れる…そう思っていた時、背後から右肩甲骨辺りに衝撃が走る。
自分での前進に加えてこの衝撃、私は前のめりになりバランスを崩す。
カレンに怪我がない様に庇いながら転倒、すぐに立ちあがろうとするも右腕に力が入らない、不思議に思い右肩を見るとジワジワと血が滲んできた。
「〜ッ!!」
再び痛みが私に襲いかかる、そこで初めてまた攻撃をされたのだと理解した。
それでも立ちあがろうと必死になるが違和感を覚えた…カレンの掴む手がない。
確かに右肩あたりを掴んでいたはずの手、それがない…
「………カレン?」
カレンに視線を向けた…私の目に入って来たのは瞼を下ろし物言わぬ少女。
その左胸からは─────血が流れて…。
理解した瞬間に言葉より行動していた、私は必死にカレンへ治癒魔術を施していた。
「ダメッ!!お願いダメよ!こんなッ…お願い息をしてッ!!」
口から懇願の言葉を叫んでいた。
私の覚えたての治癒魔術がどれだけ効果があるなんてわかりはしない。
それでも必死になり自身の痛みなど忘れて魔術をかけ続ける。
背後から近づいてくる…元凶など気にすら留めていなかった。
が、背後から迫り来る元凶よりも私の身体が限界を迎える。
出血多量に加えて治癒魔術による魔力の使用はかなり無茶をしてしまっていた。
カレンを抱いたまま地面に倒れ込んだ、それでも必死に手を取り治癒魔術を流しつづけた。
霞む視界、音が遠くに聞こえてきた…意識が遠くその最中で最後に聞こえて来たのは魔物の断末魔。




